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2019年6月9日 東京茶道会茶会(六月)

2019年08月14日(水)
六月の東京茶道会茶会が九日の日曜日に東京音羽・護国寺様において開かれ、江戸千家からは宮崎宗房様が〈牡丹の間〉にてお席主を勤められました。
関東地方が梅雨入りして二日後のこの日、雨こそ降りませんでしたが終日曇り空。それでも〈牡丹の間〉には大勢様がお見えになり、お席を楽しまれてゆきました。
今回は、御軸から始まって一元斎宗匠所縁のお道具を揃えられたとのこと。さらに季節柄あまりくどくなく、さっぱりと流れるような水のモチーフを取り入れたお道具組を心掛けられたと承りました。その詳細は文末記載のお会記で御確認いただくとして、ここでは印象に残ったいくつかを御紹介いたします。
まず御軸はもちろん一元斎筆の画讃「白浪漲天」。蒸し暑い時季にはピッタリの御軸。また一元斎宗匠筆の画讃はあまり残っていないそうで、しかも季節を選ぶ御軸ですからこれまでなかなか使える機会がなく、今回初めて掛けられました、とお席主の宮崎様。
花入は一元斎作の小振りな竹一重。これを掛花入にして、お花は姫沙羅など五種をたっぷりと生け、香合も御軸に合わせて蛤に宝尽くしの金蒔絵。キラリと美しい光を放っておりましたが、さらに書院に飾られた高坏が一見黒漆に金蒔絵と思いきや、実は銀器に荒磯蒔絵の施された逸品で驚かされました。無論こちらも御軸に合わせての〝荒磯〟であります。
お釜はお家元好の「六角風炉」で菊地正直の作。お家元の箱書に「好 二十之内」を記されておりますが、御流儀の皆さんもあまり拝見したことがないという珍しいもの。杉皮を網代に編んだ風炉先も珍しく、さっぱりとした感覚がこの日の気分に合っておりました。
一元斎好の亀甲棚に水指は祥瑞(浅見)五郎助作の刷毛目螺鈿で銘「螢」。御銘の由来は胴の何箇所かに螺鈿が嵌め込まれ、これが螢のように光を放つため。初めての拝見で吃驚いたしました。
茶器は一元斎在判の黒中棗。重茶盌は森岡嘉祥作の粉引写でお家元の箱書の添う銘「滴翠」。替茶盌が「鉄線」画の献上薩摩。さらに三客に出されたお茶盌は当代豊斎作、朝日焼の月白釉。いずれもこの時季のお席に合った涼しげな佇まいが結構でした。茶杓は一元斎好、雪輪蒔絵の塗茶杓。
御菓子は半田松華堂製「焼き葛」。菓子器も素晴らしく明代の呉須染付。かなり古い作で色合に深みがありました。またお席主のお話では、窯ではなく野焼きのように焼かれたらしく、高台やその周辺に砂などの跡が残っており、これも見所のひとつとなっておりました。
いつもながら宮崎様のお席はお道具組について話題が豊富で会話も楽しく、さらに今回はお孫さんおふたりがお運びを務められましたので、より和気に溢れた〈牡丹の間〉のお席でありました。
〈当日の会記〉
令和元年六月九日
東京茶道会茶会
於 音羽護国寺 牡丹の間
江戸千家
主 宮崎宗房
床 一元斎筆 
白浪漲天 当代家元箱
花  姫沙羅 小海老草 苧環
河原撫子 松虫草
花入 一元斎手造一重切 一元斎箱
香合 宝尽くし 鮑 要人造
釜  当代好二十内六角釜 正直造
風炉先 春日杉あじろ
三十九鳳嶽作
棚  一元斎好 亀甲棚
水指 刷毛目螺鈿 銘 螢
祥瑞五郎助造
茶器 黒中棗 一元斎在判 当代箱
茶碗 粉引写 銘 滴翠
嘉祥造 当代箱
替 献上薩摩 鉄線絵
茶杓 一元斎好 雪輪茶杓
当代共筒箱
建水 好 砂張 平建水 当代箱
蓋置 さざえ
御茶 寿泉の白 ほ里つ詰
菓子 焼きくず 松華堂製
器 呉須 染付 明時代
以上

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