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2019年10月6日 熊野那智大社「御献茶式」「記念茶会」

2019年12月13日(金)
十月の第一日曜日である六日、熊野那智大社様にて、今年もお家元による御献茶奉仕が行われました。お家元の御奉仕も今回で十二回目に。当日は快晴に恵まれ、遠方からの方々も含めて大勢様はお出ましになりました。
なお現在那智大社様では、創建一七〇〇年記念事業の一環として、御瀧前の建物が整備中のため、本年の御献茶の儀は境内の〈拝殿〉にて行われましたが、こちらは今春改修工事が完了したばかり。朱塗の柱が目にも鮮やかで、清新な気持ちで臨みました。
お式に先立ち、お家元はじめ御宗家の皆様は社務所にて男成洋三宮司様に御挨拶。宮司様よりは十二年連続となるお家元の御奉仕に対し御礼の言葉をいただき、記念事業の進捗具合などについてお話がございました。
御献茶式
午前十時、大太鼓の音が響き御献茶式の開始を告げます。まずは境内の〈斎館〉より御神職の先導を受け御宗家の皆様と、今年も御参列下さった那智勝浦町長・堀順一郎様、そして男成宮司様が〈拝殿〉に向かわれます。この時〈拝殿〉はすでに満席状態に。皆様が着座されますとお式の御案内があり、御神職による誓文の読み上げを一同起立して拝聴。次いで全員が修祓を受け、御祭主が御神前にて一拝。御祭主が神餞を奉り祝詞を奏上された後、「献茶の儀」となります。本年は若宗匠が御献茶点前を勤められ、お家元も昇殿し御後見されました。いつものように濃茶、薄茶の二碗が御神職によって御神前に献じられました。
御献茶を終えますと御祭主が玉串を奉りて拝礼。続いてお家元、若宗匠、堀町長による玉串拝礼をとなり、撤餞の儀、御祭主が改めて御神前にて一拝されてお式は無事終了。最後に男成宮司様より御言葉を賜りましたが、令和最初の御献茶式であり、本年は熊野が世界遺産指定されて十周年というお目出度い年であること。そして熊野の信仰と茶道とは、自然との調和、共生する思想で相通じるものがあるとのお話を皆さん聴き入っておられました。
記念茶会
「記念茶会」は〈拝殿〉の改修完了に伴い、いつもの〈斎館〉にて開かれました。
今年も表千家くまの清和会様が副席をお持ち下さり、先ずは皆様こちらへお席入されました。床には見事な酔芙蓉。そして御軸が東大寺長老・上野道善猊下筆の「祥雲」だったこともあり、非常に親しみが感じられるお席でございました。
一方、家元席の方は、まず御軸が啐啄斎筆、ご流祖の箱書が添う一行「月林散清影」。杜甫の五言律詩「遊龍門奉先寺」の一節とのことで、深まりゆく秋に相応しい語句。また中廻しに銀で松が描かれている珍しい表装もお客様の目を惹いておりました。唐物籠の花入にお花は七種、丘虎の尾の照葉、白の竜胆、秋の麒麟草、大柚香菊、女郎花、杜鵑草、薄野。またこの日は旧暦での重陽の節句にあたりましたので、書院には菊蒔絵の施された時代の錫縁香合が飾られました。
ご流祖好の菊桐地紋の真形透木風炉釜は箱書に文政四年とある江戸名越の作。お家元好の方円棚に阿蘭陀水指。茶器は守屋松亭よる美しい秋草蒔絵。主茶碗はご流祖作の赤楽で銘「半月」。正面に白く大胆な構図の三日月が描かれておりますが、当時は満たないものは全て「半」としたのでこの御銘になったと承りました。替茶碗は時代の萩、七代蓮々斎の箱書には新古今集(秋上)にある祐子内親王家紀伊が詠んだ次の和歌が。 
を(置)く露もしづごころなく秋風に
みだれて咲ける真野の萩原
茶杓もご流祖作の銘「鶉」。共筒には「八十一翁 不白」とありましたが実はこちらも歌銘で、共箱には千載集(秋上)収録の俊成の和歌が記されてありました。
夕されば野辺の秋風身にしみて
鶉鳴くなり深草の里
季節感に溢れた見事なお取り合わせだと感じました。蓋置は宗鶴師作の千切。菓子は地元珍重庵製。
お席には男成宮司様が正客に入られ、お家元が改めて御挨拶を。お点前は若宗匠が、半東は智大様がそれぞれお務めになりました。御献茶を終えた後ということもあり、和やかな雰囲気に満ちていた記念茶会でありました。

熊野那智大社様の翌週は毎年川崎大師様の御報告をしておりますが、本年は前日に東日本全域が台風19号による記録的大豪雨に見舞われ各地で被害が。多摩川も数箇所で決壊したため、恒例の「御供茶式」や神奈川支部「秋季茶会」も中止に。致し方ないこととはいえ、誠に残念でありました。

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