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第十六回  弥生会

2018年01月4日(木)

第十六回  弥生会
十月十六日(日)
初心者の方も気軽に親しめるお茶会「弥生会」。その第十六回目が十月十六日(日)、江戸千家会館にて開かれ、いつものようにお茶席二席と点心席がご用意されておりました。この日の東京は暖かく秋晴れの一日。朝早くから大勢様がお出ましになりました。

第一席〈担雪軒〉では翠鶴先生がお席主を務められました。今回は毎回お点前もなされましたから、お客様方も大変お喜びに。また峯雪先生が半東に入られたうえに、お家元もお出ましになって、お道具組のことや、中置で大板を使う際の注意点などをとても分かりやすくお話下され「弥生会」らしさが感じられました。

床の御軸はご流祖筆「武蔵野の画讃」
茶の道はたとるも広しむさし野の
月のすむなり奥ぞゆかしき

裏千家六代六閑斎宗匠の和歌を写されているとのこと。この御軸からも感じられますように今回の〈担雪軒〉は秋の風情に満ちたお道具組でありました。
大きな手付籠には、白竜胆に山芍薬の実、紀伊上臈杜鵑や白と紫の菊など九種のお花が溢れるように活けられているのが実に美しく、並んだ柿の香合も秋らしく色鮮やかで光沢のあるもの。
名残りの月のお茶会らしく大板の中置で風炉釜は鬼面鐶付に撮みは梔子という芦屋。如心斎好、樂六代左入作の梔子水指。色合も形も見事な逸品ですが、この取り合わせに「この季節らしくてきれいですね」という声がたびたび聞こえてきました。
茶器は立派な秋草蒔絵の吹雪。この茶器と非常に華奢な茶杓の組合せが面白く、こちらは啐啄斎作共筒、即中斎箱の銘「武蔵野」。

主茶碗は一元斎作の三朝焼で銘「さよ砧」。
山ひとつ越えて里ありさよ砧

替茶碗は扇面菊水紋が華やかな白薩摩。
三日月の蓋置は乾山写しで三浦乾山作。御菓子は赤坂塩野製「山の幸きんとん」。
第二席〈広間〉では石川光雪様が席主をお務めに。こちらは茶箱でのお点前という「弥生会」では珍しい御趣向。それ故にまずは当日のお会記から御覧下さい。

〈会記〉
主 石川光雪
床 不白筆 画讃
於 川崎大師平間寺
鶴来松有色
花入 手付籠 青雲斎
花  紀伊上臈杜鵑 檜扇の実
千振の花 藤袴(赤・紫)
岩沙参 河原撫子
香合 鶴香合  祥窓
瓶掛け 白釉
湯沸 素銅撮環湯沸  紹美
結界 高台寺文杉  指物師 繁斎
茶箱 籠茶箱皆具
七宝蒔絵茶箱皆具
替 櫛目茶碗  六兵衛
盆 雪輪盆  慶塚
建水 曲
御茶    小山園詰
菓子 福寿  京宮製
器 松末広盆  茂松
以上

ご一読いただければお分かりの通り細部まで実に凝ったお道具組。一つずつお話したいところですが、紙量の都合上、特に印象に残ったいくつかについて記します。
床の御軸はご流祖筆「鶴の画讃」。その大胆な構図に驚かされました。また香合も鶴でしたが、こちらは蒔絵師安原祥窓の作。鋭さのある作風から床全体が引き締まった感じを受けました。
さて、お会記にあります茶箱二種の内、お点前に用いられたのは「七宝蒔絵茶箱皆具」。但し七宝といっても色合は渋く、主茶碗は卍紋と雨竜紋のある青味の深い染付。時代を感じさせるお茶碗です。また瓢形の振出しも染付とはいえこちらは呉須赤絵。「大明萬暦年製」銘というまさに時代の逸品。いずれも落ちついた雰囲気が感じられました。
もう一方の「籠茶箱皆具」は寄付に飾られておりましたが、こちらもお客様に大好評。籠の素材は籐で柔らかな印象。桑木地の茶器は菊の蒔絵。お茶碗は幕末京薩摩の影響が強いという京焼(粟田口焼)帯山与兵衛作。そして振出しは新高麗とこれも見事な組み合わせ。
本来あまり寄付のお道具組の詳細まで記載することはないのですが、当日、是非こちらについてのお話も載せて下さいとのご要望が多かったため御報告した次第。
お席主の石川光雪様にはお力添えを賜りましたこと、深く御礼を申し上げます。







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