トップページ > 2018年6月10日 東京茶道会茶会(六月)

2018年6月10日 東京茶道会茶会(六月)

2018年09月27日(木)
「不白敬和会」の翌日、同じく護国寺にて六月の東京茶道会茶会が開かれ、江戸千家からは佐藤宗閑様が〈宗澄庵〉でお席主を務められました。昨年もやはり不白敬和会の翌日の東京茶道会で佐藤様がお席主をされましたが、さらに共通するのが前日との気候の変化の激しさ。先述の通り前日は真夏日でしたが、この日は時折小雨の降る涼しい一日。不思議な符合にお席主はじめ当方も大変驚いた次第です。
しかし一番驚かされたのはこの日の〈宗澄庵〉が濃茶席であったこと。とはいえ、いつもお話の楽しい佐藤様のお席ですから堅苦しさは少しもなく、大勢のお客様方がお席を満喫されておりました。
床の御軸は大龍禅師筆の横物「茶烟」。烟は煙の旧字。すなわち「茶煙」の意に。「茶煙(論)」でピンと来る方は本誌の超ご愛読者。本年2月号の熊倉功夫先生〈茶の湯日和〉の題がまさしく「茶煙論」でありました。しかも、この日三回目の驚きが、御軸の解説にこの熊倉先生の文章を引いて下さったこと。編集部としては面映ゆくも誇らしく思えたひと時でした。さて、佐藤様のお話を要約しますと、「茶」と「煙草」がその優位性を争ったところで、結局茶には湯が、煙草には火がそれぞれ必要であるように、一人の力では何も出来ぬと「茶煙論」では引き分けになりましたが、これは御茶においても同じで、亭主と客が居て初めて成立する「一座建立」の思想がここに込められていると。大変に感銘を受けた御解説でありました。
紙量の都合上お道具組の詳細については〈当日のお会記〉をご参照いただくとして、以下特に印象的だったいくつかを記します。
水指はご流祖が「備前ノ土ヲ以テ造之」と箱書された手付備前で銘「次戸」。伴蓋の裏に花押とともに「宗旦好」の文字がしっかりと彫られた珍しい作でした。細身の茶入は黒薩摩で一筋のなだれが実に美しく、またお茶碗が堅手の平茶碗なのがちょっと意外でしたが、これが〈宗澄庵〉での濃茶席という雰囲気にピタリと合っていたのがまた驚きでした。さらにお茶杓が不昧公室・静樂院作の銘「むら雲」とお聞きし本日何度目かの吃驚。静樂院については本誌5月号の池田瓢阿様の連載で触れられておりますので、是非ご再読を。
楽しい会話の中に含蓄ある話柄が籠められているのが佐藤宗閑様のお席の魅力。誠に見事なお道具組共々今回もすっかり楽しませていただきましたが、その魅力的なお席の御趣向に多少なりとも本誌の内容が役立てたのならば、編集部としてこれに勝る喜びなく、改めて御礼を申し上げたいと存じます。

〈当日の会記〉
平成三十年六月十日
東京茶道会茶会
於 音羽護国寺 宗澄庵
主 佐藤宗閑
床 大徳寺 大龍禅師
横物 茶烟
花  沙羅
花入 胡銅 象耳
香合 一輪牡丹 不白好
蓮々斎箱 在判
風炉釜 鉄風炉 切合 道也造
釜 糸目真形釜 寒雉箱
水指 備前手付 宗旦好写
備前ノ土ヲ以テ造之
不白作 銘 次戸
茶入 古薩摩 一筋頽手
仕服 益田漢道
茶碗 堅手 平茶碗
家元箱 銘 夏雲
茶杓 静樂院(不昧公室)
銘 むら雲
建水 曲
蓋置 竹 家元在判
御茶 翔鶴の昔 ほ里つ詰
菓子 四葩の花 一真庵製
器 銘々 村瀬治平造
以上

25-1

25-2

25-3


  |  

▲このページのトップへ戻る