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神戸・生田神社 「御献茶祭」「記念茶会」

2015年11月12日(木)

神戸・生田神社
「御献茶祭」「記念茶会」
九月二十二日(火・休)
シルバーウィークと呼ばれた九月末の大型連休中の二十二日は火曜日でしたが、今年は国民の祝日に。神戸の生田神社様では恒例の「秋祭神賑行事」が開かれており、この日は午前十時より「御献茶祭」が執り行われ、本年はお家元が御献茶奉仕をなされました。こちらでのお家元の御奉仕は平成二十四年以来三年ぶり。まことに秋らしい爽やかな好天に恵まれ、朝早くから多くの方々がご参集になりました。
また当日は「記念茶会」もあわせて開かれ、〈拝服席〉〈副席〉〈点心席〉の三席がご用意されておりましたが、どちらのお席も大勢様がお見えになり、午後三時の終了時刻まで終日賑わっておりました。
「御献茶祭」は境内「拝殿」にて。奥の「本殿」前に広く明るい舞台があり、こちらに点前座が設えられ、さらにその手前に何列もの椅子席が用意されましたが、御参列の皆さんで早々にいっぱいになり、増設もしていただきましたが、始まる頃には拝殿内は満席状態となりました。
午前十時、生田神社宮司・六車勝昭様を先頭に神職の方々が昇殿され本殿左側に着座、続いてお家元、翠鶴先生、若宗匠、峯雪先生、智大様が右側の席に付かれ「御献茶祭」の開始となりました。
まず大太鼓の音が響き、雅楽の演奏の後の「修祓の儀」から始まり、ご宗家の方々、点前座、そして御参列の方々がお祓いを受けました。ついで六車宮司様が神前に進まれ一拝、これにあわせて全員が立ち上がり本殿に向かって一拝。そして神前に「御神餞」を奉り、六車宮司様が祝詞を奏上され、我々も頭を垂れてこれを聴き入りました。
宮司様が座に戻られますと、お家元が進み出られて点前座に入られていよいよ「御献茶奉仕」となります。半東は若宗匠がお務めに。時折参拝の鈴の音が大きく響くとはいえ誠に厳かな雰囲気の拝殿。お家元が点てられた濃茶、薄茶の二碗はそれぞれ若宗匠から神職の方に渡り、御神前に献じられました。
お点前を終えられたお家元も御神前にて一拝され、その後雅楽の奉納があり、改めてお家元による玉串の奉呈と拝礼、続いて近畿支部長・岡本宗加様も玉串を奉呈されて拝礼。これにあわせてご社中の皆さんも起立して二礼二拍手の拝礼。「御神餞」が撤せられ、宮司様が御神前にて一拝されまして滞りなく終了となりました。最後に六車勝昭宮司様より御挨拶を頂戴し、お家元並びにご社中の皆様方へ感謝の意を申し述べられ秋の「御献茶祭」を結ばれました。

「記念茶会」は「御献茶祭」終了後の午前十一時より、お家元席である〈拝服席〉は神泉亭にて、また近畿支部様の〈副席〉は生田神社会館三階「菊の間」にて開かれました。どちらも神戸三ノ宮の繁華街がすぐそばにあるとは思えぬ静かで落ち着いたお席でありました。
〈拝服席〉の設えられた神泉亭は本殿の後方、「生田の森」の一角。宮司様の御挨拶でも順徳院の和歌が引かれていたように古来より歌枕として名高い「生田の森」は平成十三年より整備が進み、現在は市民の憩いのスポットに。すっかり秋めいたこの日の季候でしたが、深閑とした森の中から蝉の声が聞こえてきたのが今でも耳に残っております。
拝服席では若宗匠と峯雪先生が交代でお点前をされ、半東には毎回智大様が入られました。
床の御軸はご流祖八十二歳の筆の一行「秋沈萬水家々月」(秋は萬水に沈む家々(かか)の月)。その豪快な筆致に魅せられました。禅語でこれには対句があるそうで、それが「春入千林處々花」(春は千林に入る処々の花)。表千家様の正月のお席では決まって掛けられる語句であるとのこと。
木耳付の唐物籠には翠鶴先生によって吊り花の紅葉に山芍薬の実、秋明菊に紀伊上臈杜鵑や竜胆など。青貝の香合は麒麟の図。深みのある輝きが暗めの床に奥行きを持たせます。
釜は芦屋。総霰の真形に切合風炉。風炉先は時代の流水紋。お好みの双鶴棚には藍オランダの水指。細かな図柄が独特で、色合いも双鶴棚に映えておりました。
茶器はご流儀の方々にはお馴染みのご流祖好「鶏頭棗」。塩見小兵衛作。久々に拝見しましたが、いつもながら名品だなぁと思います。お家元がにこやかに手に取るようお勧め下さいましたが、どうしても手が出せず毎度しげしげと拝見するばかり。
主茶?はご流祖箱の高麗茶碗「金海」。白磁色が美しいお茶?。また猫掻き(猫が爪で引っ掻いたような文様)のないこうした金海茶?もあるのだとお教えいただきました。
替茶?は四代鶴叟宗匠箱の赤楽、銘「渋柿」。こちらは樂家五代宗入の作。いかにも熟した柿を思わせる色が主茶?の白と対照的で楽しく拝見しました。
茶杓はご流祖作の銘「白菊」。厚みのある力強さはご流祖らしい作。蓋置は一元斎好の雪輪の染付。
菓子は京都末富製。当日朝に京都から届いた故か実に色鮮やかなピンク色。お客様方も大変喜ばれておりました。菓子器は川瀬忍作の青磁鉢。
〈副席〉は神泉亭と池を距て建つ生田神社会館三階の「菊の間」での近畿支部様の皆様方による立礼席。窓が広く三ノ宮のビル群が一望できる明るいお席でした。
床には大龍和尚筆の一行「月落不天離」。迫力があり広いお席にピッタリ合っておりました。唐物写の手付籠には盛り沢山に名残りのお花が。
高円卓に淨林作の屋根釜は瓢箪の鐶付。その形状が面白く、また水指の染付菱馬は菱形の水指というのも珍しく、染付も鮮やかな色合いでこちらは道光年製とのこと。一元斎宗匠お好み真塗の雪輪の茶杓も美しく、その他のお道具組みの詳細については次のお会記をご参照下さい。
〈会記〉
平成二十七年九月二十二日
生田神社 記念茶会 副席
江戸千家不白会 近畿支部
床 大龍和尚筆
  月落不天離
花入 唐物写手付籠
香合 青貝虫 近左造
釜  屋根釜 浄林造
棚  当代好高円卓
水指 染付菱馬 道光年製
茶器 芦田鶴蒔絵
茶? 絵志野
替 秋草 珉平造
茶杓 一元斎好 雪輪
建水 菊 毛織 淨益造
蓋置 萩 白井半七造
御茶 深雪の白 山政小山園詰
菓子 乃ぎく 鶴屋八幡製
器 菊 左入造
以上

この日奏上された祝詞の中に「慌ただしき日々の暮らしの中で茶道を心の糧とし」とありましたが、何かと慌ただしい日常生活を送っている身ですが、お茶席に伺うことで心豊かになり、リフレッシュできているのだと再確認できた秋晴れの一日でありました。






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