トップページ > 2017年10月8日 開創八九〇年慶讃 御家元勤仕三十周年川崎大師「御献茶式」 江戸千家不白会神奈川支部創立六十周年「記念茶会」「記念親睦会」

2017年10月8日 開創八九〇年慶讃 御家元勤仕三十周年川崎大師「御献茶式」 江戸千家不白会神奈川支部創立六十周年「記念茶会」「記念親睦会」

2018年04月20日(金)

毎年秋に行われております川崎大師平間寺様での江戸千家「御供茶式」でありますが、今年はお家元の御献茶勤仕が三十周年を迎え、あわせて境内では神奈川支部創立六十周年を祝う「記念茶会」も開かれました。さらに夕刻からは「記念親睦会」も開催されましたので、十月八日は誠に祝意に満ちた一日となりました。
御供茶式
この日は快晴とはいえ、最高気温が二六℃と季節外れの夏日となりましたが、御流儀の方々をはじめ多くの参詣客の皆さんが早くから大本堂にご参集になりました。
午前十時十五分、大本坊から露払いと金棒を先頭にお練りが出発。大きな朱傘のもと境内を歩まれる御貫首藤田隆乗猊下に続きお家元、若宗匠、翠鶴先生、峯雪先生、そして御流儀の皆様方が御入堂に。
午前十時三十分、御案内と共に御式が始まりましたが、今年は御開創八九〇年にあたり、またお家元の御献茶勤仕が三十年目であり、この間一回たりとも欠けることなく続けてこられた旨の御報告がありますと、堂内には驚きと感嘆の声が静かに流れました。こうして大導師猊下による厄除け特別大護摩祈願が開始され、まずは参列者一同が合掌し御宝号「南無大師遍照金剛」を唱え、僧侶方の読経が始まり「祈願文」が読み上げられます。全員で「家門繁栄」「所願成就」を祈願し、大太鼓が鳴り響き再び読経が始まりますと大護摩の炎が大きく立ち上り、お家元、若宗匠が点前座に上られ、御供茶点前へと移ります。お家元が点てられた御茶は、若宗匠から僧侶方に手渡され御本尊様の御宝前に供えられました。
その後も大護摩の炎がより高く、僧侶方の読経の声もより大きくなってゆきますと、堂内では多くの方々が一心に合掌して御宝号と唱えられるようになり、その御姿が誠に尊いものに感じられた今年の「御献茶式」でありました。
記念茶会
記念茶会は川崎大師境内の次の三席にお釜が掛かりました。
〈家元席〉中書院「広間」(濃茶)
〈支部長席〉金剛閣二階(薄茶)
〈役員席〉客殿前総受付前(立礼)
中書院「広間」が〈家元席〉の濃茶席。例年「広間」はやや暗いお席でありましたが、今年は照明が変わって明るくなり趣が一新。まずは寄付となった「光聚庵」の床に冷泉為恭筆の「茸狩りの画」が掛かりましたので、これをじっくりと拝見。何しろ為恭の従兄弟で門弟が田中有美。有美の子が田中親美。そしてそのお孫さんが本誌連載でお馴染み福田行雄様ですから、編集部としても深い御縁を感じずにはいられない一幅です。
本席のお道具組はお祝いの茶会らしく万事お目出度いものに。床には如心斎筆の一行「萬歳萬々年」。いかにもこの日のお席に合った語句。しかも〝々(踊り字)〟が宝珠になっているという凝った御軸です。花入は宣徳銅の大蕪。花は夏櫨、冬柳、竜胆、菊、野路菊。香合は流祖好松木地亀香合。
風炉釜も流祖好の菊桐地紋透木釜で西村道也の作。棚は桐木地の双鶴棚。これで香合と合わせて〝鶴亀〟に。このお棚に水指は落ち着いた色合がお席の感じに似合う高取。飾茶器はご流祖好一輪菊蒔絵棗の写で守屋松亭の作。その美しさに息を呑む逸品です。仕服はかなり古いしじら織りの緞子。茶入はご流祖の箱書に瀬戸坊主手とある銘「東雲」。茶盌は高麗御本。見込みが深い薄作で端正でスッキリしたフォルムは実に御本らしく、鹿ノ子も美しいお茶盌でした。出袱紗は土田友湖作の船越間道の写。船越間道とは名物裂の一種で、江戸初期の船越伊予守永景が所持していたそうです。茶杓は一元斎作で銘「福乃神」。御茶はお好みの千代の昔で味岡松華園詰。菓子は鶴屋八幡製「菊きんとん」。
〈支部長席〉は大本堂横の金剛閣二階に設けられた薄茶席。こちらでは神奈川支部長・霜田宗岱様がお席主をお務めになりました。
床の御軸はご流祖筆「武蔵野画讃」
むさし野の草のかげよりけふの月
大板に朝鮮切合の風炉釜、そして細水指は色合や形、さらに節の具合などから竹に見立てられたと。また、床に飾られた蒔絵硯箱は紅葉に鹿の画、さらに茶器の竹林七賢人などいずれも蒔絵の美しさが堪能できました。
主茶盌には宗鶴師手造りの黒樂、替茶盌にはお家元作の赤樂で銘「曲水」。どちらも重厚感のある立派な佇まい。特に宗鶴師の黒樂は珍しいと御流儀の方々は大変喜ばれておりました。また南鐐の蓋置が縁起の良い括り猿の図柄というのもお席に相応しく、全体的に落ち着いた雰囲気のなかで秋の情感を深く感じられたお席でありました。
〈役員席〉は例年通り客殿総受付前での立礼席。御軸は一元斎筆の扇面「茶是長寿友」。〝いい言葉ですね〟と仰有るお客様も多く、唐人笠の花入にお花七種はいずれも凝ったものばかり。乾漆の茄子の香合も目を惹いておりました。
高円卓に仁清写桐竹画の手桶水指が実に華やかで、しかも古道弥の富士釜共々存在感がありました。また主茶盌の朝日焼と並んだ徳沢守俊作、三島手の須恵窯が珍しく興味深く拝見いたしました。
その他〈支部長席〉及び〈役員席〉の詳細については次のお会記をご参照下さい。
《当日の会記》
江戸千家不白会
神奈川支部六十周年記念茶会
平成二十九年十月八日
於 川崎大師平間寺
〈支部長席〉金剛閣二階(薄茶)
床 不白筆 武蔵野画讃
花  季のもの十一種
花入 環つき籠
香合 二季鳥 蔦香合
風炉釜 朝鮮切合
十二代和田美之助造
風炉先 宗匠好 雪月花透し
棚  大板
水指 細水指
茶器 竹林七賢人 秀邦造
茶盌 宗鶴師手作り 家元箱
替 当代家元 銘 曲水
茶杓 銘 福寿 大亀老師造
建水 伝来写 餌畚
十二代中川淨益造
蓋置 南鐐 くくり猿
御茶 松の齢 味岡松華園詰
菓子 梢のにしき 龍月製
器 俵形 十代坂高麗左衛門造
〈役員席〉客殿総受付前(立礼)
床 一元斎筆
扇面 茶是長寿友
花   高燈台の実 檜扇の実 犬升麻
鳥兜(白) 山鳥兜(青)
上臈杜鵑草 薄の紅葉 千振
花入 唐人笠
香合 乾漆 なす
釜  富士釜 古道弥作
大西淨長極
棚  高円卓
水指 仁清写 桐竹の画 手桶
寿香造
茶器 朱棗 芳苑作
茶盌 朝日 十五代豊斎造
銘 瑞雲 当代家元箱
替 須恵窯 徳沢守俊造
三島手 当代家元箱
茶杓 一元斎好 雪輪
建水 モール 田中秀明作
蓋置 青交趾 瓢 眞葛香斎造
御茶 深雪の白 小山園詰
菓子 稲穂 みのり 鶴屋八幡製
以上
(「孤峰―江戸千家の茶道」平成29年12月号より)

大本堂にて御供茶点前をされるお家元と半東をお務めの若宗匠
中書院「広間」の〈家元席〉
中書院「広間」にてお点前をされる若宗匠
金剛閣二階の〈支部長席〉
支部長席〉ご流祖筆「武蔵野の画讃」
神奈川支部〈役員席〉の御軸は一元斎筆の扇面
神奈川支部〈役員席〉は客殿前総受付前での立礼席


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