己亥歳の平成三十一年を迎え、今年も神田明神様への初詣で『孤峰』本欄の一年が始まりました。
一月六日(日)、いつものように人波をかきわけつつ境内に入りますと左手に目新しい建物が。こちらは旧臘十五日にオープンしたばかりという神田明神文化交流館〈EDOCCO〉(EDO Culture Complex) であります。御創建一三〇〇年の記念事業の一環として「伝統と革新」をコンセプトに建築されました。一階のショップやカフェだけでなく、充実した施設多数とのことで、興味津々でしたが何しろ大変な人出で、飲み込まれて新年早々遅刻もいけませんのでやむなく断念。集合場所の「明神会館」へ向かいます。
午後二時三十分、御参会の江戸千家有志の方々と新年の御挨拶を交わし福茶も頂いておりますと、お家元はじめ翠鶴先生、若宗匠、峯雪先生、智大様がお見えになりましたので、皆様方とともに新年の御挨拶を申し上げました。また今年もご来賓として岐阜大学教授・森田晃一先生もご参加になった新春特別参拝となりました。
午後三時、御先導を受けお家元を先頭に皆様が御本殿へ入られます。昇殿し着座しておりますと、「宝暦五年に蓮華庵、宝暦八年には花月楼が境内に建てられて以来、二六〇年に及ぶ江戸千家と明神様との深い繋がり、歴史の重みを今一度感じていただければ幸いです」とのアナウンスが流れました。明神様と御流儀の長く深い御縁が伝わってきて、厳粛な雰囲気に包まれます。
まず大太鼓が響き、祓詞の奏上、そして修祓を受け、神田明神権宮司・清水祥彦様が進み出られて御神前にて祝詞の奏上が行われました。
「遙かなる江戸の御代、宝暦の世に蓮華庵、花月楼をこの御垣の内に築き上げ」と始まった祝詞は、「その教えを受け継ぎ、変わること無く常に優れたる茶の技をそれぞれが磨き、江戸ならではの茶の湯の道を築き上げ」と続き、「江戸千家の誉れを今の世に受け継ぎ守る」お家元はじめ御宗家の皆様、御参列の方々のお名前が読み上げられました。そして「学びの教えは尽きること無く、江戸千家宗家蓮華庵、誉れの名を受け継ぎ護る」、「同胞(はらから)びとは仲睦ましく、千代万世に心正しき諸人を護り導き賜え、歳の初めを寿ぎ、伝え奉らん」と御祈願して下さいました。
これに続き御宗家の皆様が進まれて御神前に玉串を奉奠されますと、御参列の皆さんも合わせて二礼二拍手にて御参拝。改めて修祓を受け「特別参拝」も恙なく終了いたしました。清水権宮司様はじめ神職の皆様に新年の御挨拶を申し上げ、御神酒を頂戴して御本殿から再び「明神会館」へ戻ります。
恒例の新年会は会館「千歳の間」にて。御一同様が円卓に着席されますと、澤田宗直様の司会にて開会となり、改めて全員で新年の御挨拶。ついで西村宗美様による開会の辞。そしてお家元より新春にあたっての御言葉を頂戴いたしました。年頭の御挨拶、そして大勢様御参拝の御礼を述べられ、「今年は猪年でございます。私はとても猪突猛進とはまいりませんが、過去を振り返り、いろいろなことを考えながら落ち着いて進めてまいりたいと思っております」とお話下さいました。
次いで翠鶴先生がお立ちになり御挨拶下さいましたが、にっこりと「皆様ご機嫌よろしゅうございます」と話し掛けられますと、御出席の皆様も自然と笑顔となり、お正月らしい温かな気持ちが広がってゆきます。
若宗匠よりも御言葉があり、今年の干支「己亥」について、「己」には物事を正し整えてゆく意があり、「亥」の字は木偏が付くと「核」になることから、新しいことが始まることを意味しているので、「本年はこれまで学んだことを整えて、新しいことを向かってまた一歩踏み出す歳になります」とお話下さいました。
乾杯の御発声を御来賓の森田晃一先生にお願いいたしましたが、本年はご流祖生誕三百年、つまりご流祖がお生まれになったのは一七一九年ですが、この歳は享保の改革のさなかとはいえ、大変穏やかで、大きな自然災害もない、平穏な歳であったそうです。「今年が皆様にとりまして流祖御生誕の歳と重なる心穏やかな歳になりますように」との御言葉とともに全員で乾杯を唱和し、新年を寿ぎました。
ここからは食事をいただきながらの歓談のお時間に。
やがて新年会恒例の「ビンゴ大会」に。いつものように山田裕雪様と智大様が進行役をお務め下さいましたが、今年も全員に行き渡るよう多彩な景品をご用意いただき、これには毎年恐縮するばかりです。
その後も杯の応酬あり、お家元を囲んでの記念撮影あり、笑顔が絶えない宴席が続き、瞬く間に予定二時間が過ぎてゆきました。
最後に茨城支部長・鈴木宗芳様より新年への抱負を込めた閉会の言葉をいただき、楽しく和気藹々とした新年会もお開きとなりました。