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2017年4月16日 平安神宮御献茶式・澄心会大会

2018年04月20日(金)

四月十六日(日)、平安神宮様においてお家元が御献茶勤仕をなされました。当日はあわせて開かれました澄心会大会においてもお席持ちをされましたが、本年は澄心会創立六十周年記念ということで盛大なお茶会となりました。

御献茶式
平安神宮では毎年四月十五日に、年中行事のなかでも最も重要な祭儀である「例祭」が行われ、翌十六日には例祭斎行を奉祝する「例祭翌日祭」として「神饌講・澄心会・献花会・献茶講大祭」が斎行されます。御献茶式はこの御祭儀において行われますが、澄心会では各家元が輪番で献茶御奉仕を内拝殿においてお勤めになります。お家元の御奉仕は平成二十六年以来のこと。
前日が時折にわか雨の降る不安定な天候でしたので、十六日の空模様が心配されましたが、この日は朝から薄曇り、やがて御祭儀の始まる頃から陽が差しはじめ、お昼前には青空が広がる誠に絶好の日和となりました。
当日は内拝殿を大極殿との間に多数の椅子席が設置されておりましたが、早くから御流儀の方々が続々とご参集になり、開始時刻前にはすでに満席状態に。
午前十時〝神饌講・澄心会・献花会・献茶講大祭を斎行いたします〟との御案内があり、先ず御祭主はじめ神職の方々が昇殿され、続いてお家元と若宗匠、そして澄心会はじめ各関連団体の代表者の方々、最後に翠鶴先生、峯雪先生、智大様が昇殿し着座されました。
まずは御祭主が本殿御神前に進み出られて一拝、次いで修祓となり殿上の方々、ご参列の皆様、そして点前座がお祓いを受けます。
続いて神職の方々が神餞を奉奠しいよいよ「御献茶の儀」となります。静寂に包まれる内拝殿。御案内を受け、お家元が御献茶点前を、若宗匠が半東をそれぞれお勤めなりました。厳粛な雰囲気のなか丁寧にお家元が謹点された濃茶、薄茶の二碗は若宗匠の手で本殿前に奉献、神職の方によって御神前に献じられました。
「御献茶の儀」が終わりますと、御祭主が祝詞を奏上、次いでお家元と若宗匠、各関連団体の代表者の方々が御神前に玉串を奉り拝礼。再び神職の方々が立ち上がられて御神前より神餞を撤せられ、最後に改めて御祭主が一拝されますと、ご参集の皆様もこれにあわせて一斉に拝礼。御神職の方々が内拝殿を下がられ、大祭が滞りなく終了した旨のアナウンスが流れますと一挙に緊張感が解れます。なかには足早にお茶席へ向かわれる方々も多くお見受けいたしました。

澄心会大会
午前十一時より「澄心会大会」が開かれます。前述のとおり今回は澄心会創立六十周年を記念するお茶会ですので、お家元だけでなく、速水流様と扶桑織部流様もそれぞれお席持ちをされました。
〈拝服席〉貴賓館 川上閑雪
〈協賛席〉記念殿
速水流滌源会直門社中
〈協賛席〉勅使館
茶道扶桑織部家元席
〈点心席〉 平安神宮会館 瓢樹
貴賓館(尚美館)は境内東神苑、栖鳳池に張り出している釣殿風檜皮葺の建物。大正二年に京都御所より移築されたそうですが、縁先に佇みますと、池越しに満開の紅枝垂れ桜と名高い泰平閣(橋殿)が一望でき、誠に贅沢な眺めを満喫いたしました。また部屋ごとに金地に鶴や松竹梅が描かれている襖絵は明治から昭和にかけて活躍した日本画家望月玉渓の作。その迫力ある構図と豪壮な美しさには圧倒されます。
〈拝服席〉ではお点前を若宗匠が務められ、半東には智大様が入られました。この日訪れられたお客様は約五百名。濃茶席としては稍慌ただしくなりましたが、すっきりとしたお道具組と素晴らしい眺望とが相俟って実に気持ちの良いお席となっておりました。
床の御軸は如心斎筆一行「江國春風吹不起(こうこくのしゅんぷうふきたたず)」。これには対句があり「鷓鴣啼在深花裏(しゃこないてしんかにあり)」。『碧巌録』第七則よりの有名な禅語ですが、その意味については次項に詳しく記します。また、本来「江國」とは揚子江流域いわゆる江南地方を指しますが、江戸千家の京都でのお席ということで〝今日ばかりは江戸の「江」だとお思い下さい〟とのお話。さらに御軸の筆勢の見事さは如心斎宗匠筆の御軸のなかでも特出すべきものと承りましたが、なるほど大きな貴賓館の床にぴたりと収まる風格がありました。鯉耳付の七官青磁の花入には立派な牡丹。香合はご流祖の箱書付のある網双鳥紋の堆紅で、網目模様に二羽の鳥が彫られた精緻な作。また堆紅という技法についても多くの御質問がありました。
ご流祖好、菊桐紋に透木の風炉釜は西村道也作。風炉先は桐木地に雌雄の鳳凰が透かし彫りされて
いる珍しいもの。戦前活躍した木彫師・佐藤光重の作ですが、夫人が一元斎宗匠のお弟子で御縁があったのだそうです。なお眼前の池が栖鳳池、また泰平閣の屋根にも鳳凰があることから、ご流祖作の茶杓銘「鳳凰」共々こちらを選ばれたとのこと。
高麗卓に水指もご流祖好の辻焼。染付の丸紋ですが、その丸紋のうちのいくつかには細く鳳凰が描かれておりました。また丹波焼の茶入も珍しいのだそうで、こちらは阿古陀型の銘「牡丹」。なおご流祖箱書にあるふかみ草(深見草)とは牡丹の別称。
茶盌は御本呉器の銘「山櫻」。御本らしく鹿の子がきれいに出ており、淡い青味も見られる味わい
深いお茶盌でした。
その他のお道具組の詳細については以下のお会記を御覧いただきたいと存じますが、最高気温は夏日とはいえ、お席を吹き抜ける柔らかな風は誠に気持ち良く、この風を受けはらはらと桜が散る様はまさに値千金の春景色。風情溢れる貴賓館〈拝服席〉のお席でありました。
【会記】
平安神宮澄心会大会
平成二十九年四月十六日
拝服席(貴賓館)
主 江戸千家宗家蓮華菴 
川上 閑雪
寄 付
床 森村宜永筆 卯の花垣
本 席
床 如心斎筆一行 住山庸甫箱書付
江國春風吹不起
花  牡丹
花入 青磁 鯉耳付
香合 堆紅網双鳥紋 不白箱書付
釜  不白好真形菊地紋 道也造
風炉 不白好
唐金桐地紋透木 道也造
風炉先 桐生地 鳳凰透
棚  高麗卓
水指 不白好 辻焼 染付 丸紋 
茶入 丹波 阿古陀
銘 牡丹   不白箱書付
あさなけに染むる心をふかみ草
うへしかひある花の色かな
仕覆 菊唐草紋緞子
茶器 金地 住吉蒔絵 平棗
茶盌 御本 銘 山ざくら
茶杓 不白作 銘 鳳凰 共筒
建水 砂張
蓋置 一元斎好 雪輪 共箱
御茶 蓮華菴好 千代の昔
松華園詰
菓子 若緑 末富製
器 好 青漆爪紅 縁高
以上
(「孤峰―江戸千家の茶道」平成29年5月号より)

平安神宮〈内拝殿〉に入られるお家元と若宗匠
御献茶点前をされるお家元
御茶を御神前に運ばれる若宗匠
御献茶式の行われた〈内拝殿〉
拝服席〈貴賓館〉の床
お点前をされる若宗匠と半東の智大様
御挨拶をされるお家元
お点前をされるお家元と半東の峯雪先生
拝服席〈貴賓館〉より泰平閣

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