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2018年2月11日 東京茶道会招待茶会(護国寺・艸雷庵)

2018年07月13日(金)
こちらも毎年二月〈建国記念の日〉の恒例であります「東京茶道会招待茶会」が、今年も護国寺において開かれ、お家元が〈艸雷庵〉にてお席持をされました。
当日は若宗匠と峯雪先生がお点前をされ、智大様も半東をお務めになりました。
前項「川崎大師節分会」の後、再び寒気の強い日々に戻ってしまいましたが、有難いことにこの日は最高気温が14℃まであがり、ようやく春の訪れが実感できた一日に。また、今年最初の「東京茶道会茶会」ですので多くのお客様方がお出ましになりましたが、暖かな日和の御蔭もあって、どこか嬉しげな表情で皆様お席入を待っておられました。
〈艸雷庵〉のお道具組については文末に当日のお会記を掲載いたしますが、ご一読のとおり早春のお席に相応しい〝梅尽くし〟のご趣向となっておりました。

まず寄付に掛けられておりました御軸は「米壽不白」とあるご流祖筆「梅の画讃」。
野も山も笑ふて梅乃日よりかな
この日の気分にピタリと沿った御軸でしたので思わず笑みがこぼれてまいります。寄付では先に御菓子をいただきましたが、その銘も「紅梅」(鶴屋八幡製)。華やかな美しさのある御菓子でした。
続いて本席に入りますと、床には「宗旦書 如心斎紙中極」の御軸。はじめに宗旦の書は次の二行。
兩人相対語何事
語盡山雲海月情
これに〝宗旦筆 丁々軒(花押)〟
との紙中極をついておりましたが、丁々軒とは如心斎の別号であることは皆様ご存じのとおり(知らぬは当方ばかりなりで当日不勉強が露呈した次第)。この御軸だけは〝梅尽くし〟から離れ、今年の御勅題「語」に因んで選ばれたとのことです。
なお二行目の語句は、先月号の本欄「宗家御初釜」、〈点心席〉での福引において贈られたお家元筆の一行と同じ禅語でありますが、先月号ではその出典が『碧巌録』(第五十三則)であることを書き漏らしておりましたので、ここで改めて御紹介申し上げます。
お花は紅梅と加茂本阿弥。花入はご流祖作の竹一重で銘「白鶴」。香合が珍しいもので、大徳寺第四三五世大綱和尚筆の箱書および蓋裏に在判在銘のある「赤牛の香合」。箱書には、春の田もかえすがえすも世を祝ふ云々の和歌が記されており、そのとてもユーモラスな造形は辻井播磨の作とも。面白く拝見したものの、「何故ここに牛?」との疑問も浮かびましたが、すぐに「牛」→「天神様」→「梅」の連想が繋がり納得。こちらは教えていただく前に気付けて良かったと安堵いたしました。
無學和尚の書が陽鋳されている釜は、(奥平)佐兵衛こと三条釜座大西家九代浄元作の尻張釜。正面に梅の異名である「此花」、向正面には「前大徳 無學書」。またこの日は炉縁にも梅木地を用いられておりました。
備前伊部焼の水指も「梅」を象ったものかと思いましたがこちらは木瓜型。無論「梅」に見立てた御趣向ですが、お客様から御指摘があるまでしばらく錯覚したままでした。茶器は河太郎型でご流祖好、時代の梅蒔絵棗。蓋裏に〝好 不白(花押)〟と朱書されておりました。
主茶盌は共箱に「唐土ヲ以造」とあるご流祖手造、赤樂の平茶盌で銘は「梅」。以前、同じく「唐土ヲ以造」との箱書のある銘「竹」というどっしりした赤樂茶碗を拝見しましたが、実は「梅」に「竹」を重ねますとピッタリと収まるのだそうで、若宗匠のお話によると、ご流祖は「松竹梅」の三ツ重ねになるよう「松」という御銘の、おそらく筒茶盌を造られたのではないかと推測できるとのことでございました。但し残念ながらいまだ「松」は見付かっておらず、若宗匠が「どなたか発見されましたら是非お知らせ下さい」と話されますと、お席に笑い声が起き、より親密な雰囲気に包まれてゆきました。
なお「唐土」についても御質問がありましたが、ご流祖の年譜に「安永九年(一七八〇)清人呉純安より還暦の賀状届く」とあることからも分かるように、詳細は不明ながら、当時の清国とご流祖との間には、多少なりとも交流があったことは間違いなかったようだと、これも若宗匠より御教示いただきました。
それにしてもご流祖の時代に、書状だけでなく「土」までも大陸と遣り取りがあったというのは驚きで、一個のお茶盌や箱書から、こうした無限に想像力が拡がってゆくお道具組の面白さも、お茶席での醍醐味の一つでありましょう。
一方、替茶盌は正面に梅の画が描かれた御本茶盌。その可愛らしい佇まいは存在感のある主茶盌と好対照でありました。
茶杓は如心斎作の銘「黄鳥」。櫂先に向かって先細りのお茶杓は如心斎宗匠の特徴であるとも。また黄鳥とは鶯の異名ですので、梅蒔絵棗と並びますと「梅に鶯」という景色になります。
その他のお道具組については、以下のお会記を御覧いただきたいと存じますが、とにかく寒かった今年の冬。厳冬からやっと抜け出られたような当日の気候とも相俟った見事な〝梅尽くし〟のお道具組によって、一足先の春を感じさせていただいた〈艸雷庵〉のお席でありました。
〈当日の会記〉
平成三十年二月十一日
音羽護国寺 艸雷庵
主 江戸千家宗家家元
川上閑雪
寄 付
床 流祖 梅 画讃 米寿書
野も山も笑ふて梅乃日よりかな
本 席
床 宗旦 如心斎 紙中極
兩人相対語何事
語盡山雲海月情
花  紅梅 加茂本阿弥
花入 流祖 竹 銘 白鶴
香合 赤牛 
釜  無学和尚文字 此花
佐兵衛作
炉縁 木地 梅
水指 備前 木瓜
茶器 時代 梅蒔絵棗
茶盌 流祖手造 赤
銘 梅 唐土を以て 共箱
替 御本 梅の図
茶杓 如心斎斎 銘 黄鳥 共筒
建水 瀬戸 砂金袋
蓋置 一元斎 竹
御茶 寿泉の白 ほ里つ詰
菓子 紅梅 鶴屋八幡製
器 雪輪透 好 縁高
以上

㈯主茶碗 ご流祖手造の赤樂 銘「梅」

㈰〈艸雷庵〉の床

㈪〈艸雷庵〉お点前をされる若宗匠

㈭「宗旦書 如心斎紙中極」の御軸

㈬お点前をされる峯雪先生

㈫半東を務められる智大様

㈷〈艸雷庵〉寄付の御軸はご流祖筆「梅の画讃」

㉀「前大徳 無學書」とある佐兵衛作の尻張釜

㈮〈艸雷庵〉赤牛の香合


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