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2018年3月11日 東京茶道会茶会 三月

2018年07月13日(金)
三月の「東京茶道会茶会」は十一日(日)に護国寺において開かれ、江戸千家からは小邑宗和様が〈月窓軒〉にてお席主を務められました。
三寒四温の日々が続き、この日も薄曇りの空模様。それでも一ヵ月前の「招待茶会」よりも確実に春の訪れが感じられるのは嬉しいこと。お客様方もどこか浮き立つような気分でお見えになっているようでした。
春らしさはお道具組にも。〈月窓軒〉の床には宙宝和尚筆「花」の御軸。宋代の作という白磁水滴の花入には白く大きな辛夷と春蘭が生けられ、香合は十二代永樂和全作の染付。いずれも明るい美しさがありました。
話題を集めたのは脇床に飾られた時代の菓子簞笥。二百年ほど前の作でお雛様やお花見で使われたらしい見事なもの。二段目の螺鈿の美しい菓子器をお正客の器とされるなど凝った使われ方も好評でありました。
お釜はお家元好の六瓢釜で菊池正直の作。地に五つの瓢箪、全体も瓢箪型なので合わせて六瓢釜に。鐶付も蔓を象ったこれも凝った作。風炉先は大徳寺三玄院の長谷川寛州老師画の遠山。炉縁の千鳥蒔絵の螺鈿にも時代を感じさせる美しさがありました。山里棚は渡辺可映作。四君子が鮮やかに描かれている水指は隅田川焼、百花園焼と呼ばれるもので、作者の三浦乾女とは有名な三浦乾也の妹ではないかとも。この棚、風炉先、水指のお取り合せにも春らしい華やぎと、静かな落ち着きが感じられました。
茶器はお家元好の扇面蒔絵の平棗。甲蓋に扇面、その裏にお家元の花押があり、蓋を取ると立上りに雪輪が描かれている緻密な作。多くのお客様方が感嘆されておりました。
主茶盌は樂九代了入作の赤樂「鳳林写」。本歌「鳳林」はノンコウ七種の内の一つ。了入としては若い頃の作だそうですが濃く深い色合が印象的でした。替茶盌は益田鈍翁作の樂。書院に飾られた紅葉庵筆の箱書によると、鈍翁の古稀祝宴に招かれた折、鈍翁より自作のお茶盌が贈られたとのこと。また紅葉庵とは鈍翁と同じ小田原在住の茶人で宗徧流の高弟だった方。さらに三客の茶盌は諏訪蘇山作の三嶋、その他にも眞清水蔵六作の斑唐津など見所の多いお茶盌が多かったのも本席の特徴でした。
かなり細身の茶杓は香雪こと村山龍平の箱書に「月譚公作 銘帰雁」とあるように越冬した雁が帰る季節感を表しており、また月譚公とは不昧公の長男である松平斎恒のこと。さらに御菓子の銘「御堂椿」は東大寺「修二会」に所縁のもので、明後日は「お水取り」。関西ではこれを終えると春が来ると言われるように、細部に至るまで「春」を感じられるお道具組を多くのお客様方とともに堪能いたしました。
〈会記〉
平成三十年三月十一日
東京茶道会茶会
於 音羽護国寺 月窓軒
主 小邑宗和
床 宙宝筆 花 知彦箱
花  辛夷 春蘭
花入 宋 白磁水滴
香合 染付 柳下人物 十二代和全造
脇 菓子簞笥
釜  当代家元好
六瓢釜 家元箱 正直作
風炉先 遠山 寛州花押
炉縁  千鳥蒔絵
棚  山里棚 可映作
水指 隅田川焼 四君子
三浦乾女造
茶器 扇面 平 当代花押箱
茶盌 道入 鳳林写 樂 了入造
替 鈍翁造 樂 紅葉庵箱
三島 諏訪蘇山造
茶杓 月譚公 銘 帰雁 香雪箱
建水 当代家元好 砂張 浄也作
蓋置 祥瑞 六角色絵
御茶 寿泉の白 ほ里つ詰
菓子 お水取り 御堂椿
打出庵大黒屋製
器 八角提重
以上

①

②

③

④

⑤

⑥


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