トップページ > 2019年6月14日 総本山善通寺 弘法大師御誕生会法要 御供花御供茶式・記念茶会

2019年6月14日 総本山善通寺 弘法大師御誕生会法要 御供花御供茶式・記念茶会

2019年08月14日(水)
六月十四日、香川県・総本山善通寺様での「弘法大師御誕生会法要」にて「御供花御供茶式」が執り行われ、今年もお家元が御供茶勤仕をなされました。また当日は例年通り「記念茶会」も開かれ、〈拝服席〉ではお家元が、〈副席〉では高知支部様がお席持をされ、多くのお客様方がお見えになりました。

御供花御供茶式

「御供花御供茶式」は善通寺・西院(誕生院)境内にあります〈御影堂〉において開かれ、本年も御供茶とともに法華寺御流の皆様が御供花御奉仕を行われました。
午後十二時三十分、恒例の「御法話」が始まりますと、堂内に続々と御参列の方々がお入りになってきます。やがて「御法話」を拝聴し終えますと、東大寺御長老上野道善猊下、総国分尼寺法華寺御流家元樋口教香御住職様がお出ましになり御着座。続いてお家元と若宗匠が所定の位置に着かれお式の開始を待ちます。なお今年はNHKのカメラ取材も入りましたので、いつもとは少し違う雰囲気の〈御影堂〉でありました。
午後一時、先触れの錀の音とともに僧侶方が御入堂になり、内陣の左右に。次いで本日の御導師様が宝塔前に座されますと読経が始まります。間を置かず「法華寺様、江戸千家様、お点前よろしくお願いいたします」とのお声が響きますと、法華寺御流の皆様、そして若宗匠が進み出られてお点前に取り掛かられます。先ずは御供花の檜葉立華一対が御宝前に供えられます。御供茶点前は今年も若宗匠が勤められ、半東には香川支部・古竹孝雪様が入られました。濃茶薄茶の御供茶二盌が敷き詰められた白布の上を静かに運ばれてゆきますと、御参列の皆様は一斉に御供茶にお辞儀をされ、僧侶の方へ手渡された二盌はそれぞれ御宝前に供えられました。
読経が続く中、改めて若宗匠が進み出られて、御本尊に合掌されますと、これに合わせてお家元はじめ御一同様がともに頭を下げ合掌。この後も読経は続いてゆきましたが、やがて御導師様、僧侶方が御退出になり本年の御法要も無事終了。ここで特別なお取り計らいをもって奥殿近くにまで立ち入っての御焼香が許されましたので、お家元は御参列の方々とともに御本尊に御焼香をされますと安堵された御様子で、笑顔で善通寺管長・菅智潤猊下をはじめ善通寺の皆様に丁寧に御礼の御挨拶をされ、〈御影堂〉をあとにされました。

記念茶会

「御供花御供茶式」に先立ち、当日の午前十時から「記念茶会」が境内の宿坊「いろは会館」にて開かれました。本年のお席は次の通り。
〈拝服席〉三階 蝸庵
蓮華庵 川上不白
〈副席〉三階 大広間
江戸千家不白会高知支部
〈点心席〉一階 食堂
料亭二蝶 調進
〈拝服席〉は例年通り宿坊の三階「蝸庵」。お家元がにこやかにお客様をお迎えになり、お点前は若宗匠が務められました。
床の御軸は如心斎筆の箱書に〝萩之坊芙蓉画 如心斎讃〟とある「芙蓉の画讃」。まず讃の方から御紹介しますと
濃露湿丹瞼 西風吹緑裳
これは芙蓉の花と葉を詠んだもの。一方、画の筆者とされる萩之坊については、松花堂昭乗の門人で画人としても名高い萩之坊乗圓という茶人が居たそうですが、如心斎宗匠よりかなり前の時代の人ですから、その何代か後の人でなかろうか、とお教えいただきました。なお、萩之坊とは石清水八幡宮門前にある坊(寺院)のこと。芙蓉は七月から開花期を迎えますから、まさしく季節を少し先取りした御軸でありました。
手付き唐物籠の花入には白花の京鹿子、草連玉、柿蘭、仙翁、河原撫子の五種のお花が美しく、香合は時代の錫縁亀甲花菱蒔絵。床の間の渋く落ち着いた感覚が、お席全体にさわやかさを与えているように感じられました。
またこの日は脇床にも画讃が掛かりましたが、こちらは何と「猿蟹合戦」。ご流祖の讃に画は亀玉とありましたが、亀玉とはどのような画人だったかは不明とのこと。讃は
昔昔さる咄しあり 猿ケしま
かにの敵乃 思ひ知らずや
表装が出来上がってきたばかりで本日が初使い。その表装は明朝仕立てというもので細身すっきりとした仕上がりがお席に相応しく、緻密な画とユーモラスな讃がお客様に好評の御軸でありました。
一元斎好みの真形釜に切合欄干風炉の取り合わせは先々代高木治良兵衛作。風炉先は時代の流水砂子。お好みの双鶴棚に水指は一重口の高取。実に艶やかな作でした。
茶器は守屋松亭によって描かれた巌と波濤の蒔絵が見事な君が代棗。息を呑むような美しさを湛えており、またこちらは令和の御代替わりを祝して選ばれたそうで、これに合わせて茶杓も一元斎作の銘「巌」となっておりました。
主茶盌はご流祖手造の赤樂で銘「粟津」。近江八景・粟津晴嵐からの御銘ですが、ご流祖らしい分厚くどっしりした作。替茶盌は唐津三嶋で、ご流祖筆の箱書には銘「老亀」と。一見素朴な作でしたが、手に取ってみると渋みのある色合や整った造形など見所が多く、時間をかけて眺めていたいお茶盌でした。
蓋置は「宝殿」。箱書に〝改名 好 不白〟とあり、花押から七代蓮々斎が、改名の折にご流祖のお好みを写して作られたことが分かります。御菓子は地元高松の冨久呂屋製「早苗」。鮮やかな緑が瑞々しさを感じさせてくれました。
〈副席〉は三階「大広間」での高知支部の皆様によるお席。支部長の冨永宗雅様がお客様をお出迎えになり、お席では青年部の山本宗哲様がお道具組などについて、わかりやすくお話し下さいました。
床は、お大師様が室戸岬で修行されている様子を描いた大きな墨絵になっており、掛けられた御軸は、〝君か代は ちよに やちよに〟と始まる一元斎筆の「君が代」。こうした御軸を初めて拝見しましたのでちょっと驚きましたが、その優美な仮名の筆使いに見とれておりました。ところが、後刻お席入された若宗匠のお話で、これが白い袱紗に書かれていることが判明し更に吃驚。御宗家にも何枚か残っているとのことですが、どうして絹地にあれほど流麗に書けるのかと心底驚愕いたしました。
竹花入は輪無二重で二代自得斎在判という珍しいもの。背に朱書きで花押とともに〝是見人延命〟とあり実に縁起の良い、お目出度い作であることがわかります。こちらには渡辺草や常磐蓮華などがたっぷりと。なお「渡辺草」とは高知県の教員であった渡辺協氏が発見したことからこの名前があり、主に愛媛や高知、九州の深山に生えているそうですから、高知支部席らしいお花でありました。また香合は時代の松竹梅蒔絵でこれも珍しいものなのだそうです。
寄付の御軸も結構なもので、〝紫野八十五翁〟と小書のある大綱和尚筆「緑水」。季節感に溢れた御軸でありました。
風炉釜は下間庄兵衛作の朝鮮風炉。風炉先は大亀老師筆の竹の画。亀甲棚には道八作の水指。躍動感のある龍が描かれた鮮やかな染付でした。
茶器は金地に細かく亀の画、そして蓋裏には鶴が描かれている時代の鶴亀蒔絵。こちらもあまり拝見したことのない棗でした。
主茶盌は筆洗型で銘は「岩苔」。堀内家九代的斎筆の箱書に〝伊賀茶盌 岩苔〟と記されておりました。替茶盌は宗鶴師手造の赤樂でお家元が箱書に御銘を「不老」と記された存在感のあるお茶盌。茶杓は如心斎作共筒の銘「常盤」。
と、ここまでの御紹介でお分かりのように、今回の高知支部様のお席は、これまで拝見したことのなかった珍しい作がとても多く、更に新しい御代を祝すお目出度いお道具が見事に揃えられておりました。前述の通り落ち着いた雰囲気の「蝸庵」に対して、華やかな「大広間」のお道具組を多くのお客様方が楽しまれておりました。
お家元の御供茶勤仕も今年で八回目に。これまで入梅中にもかかわらず善通寺様で雨に遭うことはまずありませんでしたが、今年は「御供花御供茶式」の最中にかなり強いにわか雨が降るなど、お式でもお席でも、これまでとはどこか違う感覚が味わえた「弘法大師御誕生会法要」でありました。これが来年はまたどう変化するのか、今から楽しみになってまいりました。

1
2
3
4
5
6
7
8
9
10
11
12
13
14
15


  |  

▲このページのトップへ戻る