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第十四回 弥生会

2016年01月2日(土)

第十四回 弥生会
十一月二十九日(日)
御茶に初心者の方でも気軽に参加できるお茶会をという発意から始まった「弥生会」も回を重ねて十四回目となりました。
寒い日が数日間続いたこの日は朝から快晴で暖かく、お茶会には結構な日和に。
お席は今回も二席。第一席〈担雪軒〉では翠鶴先生が、第二席〈広間〉では澤田宗直様がそれぞれお席主を務められましたが、朝早くから終日大勢様がお出ましになりました。
〈担雪軒〉では翠鶴先生がお点前もされ、半東を峯雪先生がお務めになり、またお家元も毎回御挨拶をされお道具のことなどをにこやかにお話下さいました。「今日は分かりやすく綺麗なお道具組にいたしました」とお家元。また男性のお客様には脚を崩すよう促されるなど、まさに〝気軽な〟弥生会らしいお心遣いでありました。
床の御軸は如心斎筆「月雪花」。「いかにも楽しんで書いている気持ちが伝わってくる書ですね」とお家元が仰有るのが納得できる素晴らしい御軸。お花は寒牡丹。葉はなく木と木の間から覗く僅かに赤い莟が美しく、また気が引き締まる感じも受けます。花入は鯉耳付の青磁。八田円斎作の鴛鴦の香合は華やかというより落ち着いた明るさのある色。
鶴首釜に炉縁は宗鶴師が特に誂えられたというこれも美しい高台寺蒔絵。こちらと色合が調和した梨木地の米棚には八角形芋頭型水指。時代の染付で葡萄棚の画。本来なら替茶?、蓋置とそろえて薩摩焼の水指にされるご予定であったのが、たまたまお家元の目に止まり、変則的ながらもあえてお選びになったという水指。貴重な作なのだそうで誠に逸品でありました。
茶器は豊平翠香作の吹寄蒔絵。主茶?はご流祖作の赤楽、銘「半月」。時期的には満月の頃でしたが、赤の色がより濃いのでこちらを使われたと、これもお家元よりのお話。替茶?は薩摩で翠鶴先生のお好み。薩摩としては渋い色合。茶杓は一元斎作の銘「初時雨」。蓋置は三ツ人形の薩摩。建水は鍍金。御菓子は赤坂塩野製「山の幸」。
第二席〈広間〉は澤田宗直様がお席主をお務めに。第一席と同じく明るく華やかなお道具組。
床の御軸はご流祖筆の一行「壷中日月長」。『虚堂録』にある禅語。『後漢書』にも見られるかなり古くからある説話らしく、薬売り(実は仙人)に連れられ男が壷の中に入るとそこは別天地(仙境)。しかし数日楽しんで戻ってくると既に十数年経っていたという「浦島太郎」と似た話。禅ではここから時間を超越した悟りの境地が導かれますが、本日はこのお席を一個の壷の中と思ってお楽しみいただきたいというお席主の想いの籠もった御軸でありました。
当日のお席の詳細については下記掲載のお会記を御覧いただきたいと存じますが、まず床の斑唐津の耳付花入から珍しく、これに宗鶴師手造の橙の香合というのも嬉しくなるような取り合せ。またその造型が面白い方円釜にも多くのお客様が注目されましたが、こちらは江戸名越六代建福の作。海老鐶付に撮みは梔子。六代建福はご流祖のお好み釜を多く手掛けた釜師とのこと。紫交趾の水指も色合も配色も独特で明るいお席でのアクセントになっていました。
茶器は鴨が餌を狙って垂直に急降下する珍しい絵柄。躍動感もあり金蒔絵が華やかな平棗でした。
主茶?は樂家十代旦入作で赤というより紅に近い色濃い作。旦入の隠居印が捺されておりました。替茶?はこれも第一席と同じく薩摩でしたが、白味が強く、主茶?とはより対照的になって際立っておりました。
〈第二席の会記〉
主 澤田宗直
床 流祖筆一行 壷中日月長 
花  加茂本阿弥椿 野紺菊
   ブルーベリーの照葉 
花入 斑唐津耳付 小十造
香合 宗鶴先生手造 橙 当代箱
釜  方円 名越造
炉縁 一元斎好雪輪紋 当代箱
 先 熨斗
棚  高麗卓 静齊造
水指 紫交趾桶側菊唐津
翠嵐造
茶器 鴨蒔絵平 一兆造
当代箱
茶碗 旦入 赤 吉左衛門箱
 替 薩摩 陶正山造
茶杓 当代家元作 銘 蓬莱 共筒箱
 建水 砂張 源六造
 蓋置 萩七宝透 陶兵衛造
御茶 深雪の白 小山園詰
菓子 木枯 鶴屋八幡
 器 九谷赤絵魁

お家元も翠鶴先生も、いつも以上にお道具を手に取るようお勧めになりましたが、やはりこうして実際に触れられる体験が何より勉強になりますという声を多く耳にいたしました。また時にはお家元が直接拝見の仕方を御指導になる場面が見られるなど、実に「弥生会」らしい雰囲気に包まれたお茶会でありました。




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