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2020年2月11日 東京茶道会招待茶会

2020年03月17日(火)
毎年二月十一日の建国記念の日に開催されております「東京茶道会招待茶会」は、早春の恒例茶会としてすっかりお馴染みですが、今年もお家元が護国寺〈圓成庵〉にてお席持をされました。
昨年の「招待茶会」の日は「最高気温は4℃止まり」だったと本欄で御報告しましたが、今年の最高気温は12℃。たしかに暖冬なのがわかりますが、当日は晴天に恵まれたとはいえ風もあり、少しでも陽が翳るとやはりまだ冬の寒さが感じられる日和でした。それでも大勢様がお出ましになり、お席は終日賑わっておりました。
〈圓成庵〉では毎回お家元がお客様方に御挨拶をされ、お点前は若宗匠と峯雪先生がお務めに。また半東には今年も智大様が入られました。
改元後最初の「招待茶会」であることから、お目出度く、また趣向に富んだお道具組を楽しませていただきました。
床の御軸は如心斎筆、啐啄斎箱書の「鍵の画讃」
春風や山門あける鍵の音
ちょっと不思議な画でしたのではじめは戸惑いましたが、お話を聴いてそう言えば土蔵の鍵でこういうものがあったと納得。また「鍵」は宝尽くし文様の中にもある吉祥文なのだそうで、「開ける」というキーワード共々お席の趣旨に沿う御軸でした。さらに一文字に如心玉裂が使われた凝った表装でもありました。
花入は一元斎作の置筒で銘は「幾千代」。お花は岩根絞り椿に油瀝青(あぶらちゃん)というこれも珍しい取り合わせ。香合は樂十代旦入作の朝日。数印が捺してありましたが、お茶碗ならともかく、香合で数印があるのは珍しいのではと。そして先廻りしてお茶杓を紹介しますと、ご流祖作共筒で銘は「常盤」。この「幾千代」「常盤」「朝日」という組み合わせには、〝令和の御代が末永く続きますようにという願いが籠められております〟とのお話に、お客様方は感歎されておりました。
釜は肥前芦屋。小振りながら肩霰の真形釜で、霰の打ち方の柔らかな感覚が独特。その時代の作風が伝わってくる結構なお釜が拝見出来ました。また小振りの釜を据えたのは、あえて炉の火を見せることで、お客様に暖かさを感じていただこうという意図があるとお聞きし、そういう用い方もあるのかと少々吃驚いたしました。
素朴な感触の炉縁は大徳寺山門「金毛閣」古材。こちらは当然御軸の画讃と共鳴しております。
〝水指は矢筈口の信楽〟と若宗匠がお話しになりますと、席中が少しざわつくのはNHK朝の連続ドラマ「スカーレット」の影響でしょうか。深い色合が落ち着いた風情を醸し出す小間の〈圓成庵〉にはピッタリの水指でした。
主茶盌はご流祖作の赤楽で銘「玉椿」。重厚感のある大きな作が多いご流祖手造茶碗の中ではかなり小さいこの「玉椿」。異色作の登場に些か驚かされましたが、これに合わせて、茶器も同じくご流祖お好みの内で最も小さく、また縁起の良い図柄である鶴亀棗が使われました。こちらは闇蒔絵で蓋の甲に鶴、裏に亀が描かれております。闇蒔絵とは黒地に黒漆で描く技法ですから、画は光線の具合で見えたり見えなかったりしますが、眼が慣れてくると、微妙に盛り上がった描線が浮かぶように見えてきて娯しくなります。これも小間〈圓成庵〉ならではの楽しみ方なのかもしれません。
替茶盌はご流祖箱書の金海。猫掻きこそないものの、薄作で撥高台の盌形は金海の特徴で、何より艶やかな白の発色が美しく、主茶盌と替茶盌で鮮やかな紅白のお取り合わせによって、令和を祝す御趣向でありました。
蓋置は高取の雪輪で先代亀井味楽作。御菓子は早春のお席に相応しい鶴屋八幡製「紅梅」。
季節感を漂わせつつ、落ち着きと祝意を共存させた見事なお道具組とお席の雰囲気を堪能させていただきました。
なお今回はお道具紹介の都合上記述の順番がいつもと違っておりましたので、以下にお会記(のようなもの)を記載いたします。但しこれは、あくまで編集部が当日のお話をもとに独自作成したものでありますこと、どうぞ御了承願います。

東京茶道会 招待茶会
令和二年二月十一日
音羽護国寺 圓成庵
主 江戸千家宗家家元
川上不白
床 如心斎筆 鍵の画讃
春風や山門あける鍵の音
啐啄斎箱
花  岩根絞り椿 油瀝青
花入 一元斎作 置筒 銘 幾千代
香合 朝日 旦入作共箱
釜  肥前芦屋 真形 肩霰
初代垤志極
炉縁 大徳寺山門古材
水指 信楽 矢筈口
茶器 流祖好 闇蒔絵 鶴亀棗
塩見小兵衛作
流祖在判共箱
茶盌 流祖手造 赤 銘 玉椿
替 金海 流祖箱
茶杓 流祖作 銘 常盤 共筒
建水 瀬戸
蓋置 高取 雪輪 先代味楽作
御茶 寿泉の白 ほ里つ詰
菓子 紅梅 鶴屋八幡製
器 好 縁高
以上
(「孤峰 江戸千家の茶道」令和二年三月号より)

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