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2017年6月10日 第五十一回不白敬和会

2018年04月20日(金)

今回で五十一回目となる「不白敬和会」が、六月十日(土)に音羽・護国寺にて催され、お家元が〈不昧軒〉にてお席主をお務めになりました。なお今回は次の三席にお釜が懸かりました。
〈不昧軒〉 お家元
〈艸雷庵〉(立礼席) 小川宗洋様
〈楓の間〉 中村宗正様
関東は三日前に梅雨入りしたものの、この日は快晴で、東京は最高気温が32℃という真夏日になりました。しかも〈不昧軒〉には冷房がありませんので、はたしてどうなることかと心配いたしましたが、行き届いたご工夫の数々によって実に清々しいお席となり、多くのお客様方も大変に喜ばれておりました。
その〈不昧軒〉では峯雪先生がお点前をお務めになりましたが、まず平茶盌に千鳥茶巾でのお点前が涼やかに感じられます。またお道具組も少しでも涼しさを感じていただけるようにとのお心持ちから、長閑な自然の中で御茶を頂くような雰囲気が伝わってまいりました。
床の御軸はご流祖八十三歳の折に書かれた雨の画讃「雨近き(起) 野沢の月や 鳴く蛙」。入梅中にして昨晩は満月。まさのこの日にピッタリの御軸でありました。お花は河原撫子を中心に鉄線と大山蓮華が美しく、花入の鵜籠とは鵜匠の使う鮎を入れる魚籠を象ったもの。六月といえば多くの地域で鮎が解禁になりますから、渓流に思いを致すだけでどこか清涼感が漂います。また籠地に青貝で蟹が象嵌された香合も水の流れに所縁ある見事な作。
流水紋の料紙が施された風炉先には芦屋切合風炉。釜は総霰の真形で鬼面鐶付。桐木地の雪輪棚に置かれた水指は明末の頃の作と思われる染付。三ツ脚の太鼓型、胴に人物紋が描かれたこちらはそもそも香合から転用されたといういわゆる見立て道具で、内側に釉薬がないのがその証左とお教えいただきましたが、この取り合わせもやはり涼しさが感じられるものでした。
流水のイメージから茶器も守屋松亭による渦の蒔絵。何度目かの拝見ですが、いつもながら溜息が出てしまう名品。一見すれば金色の平棗ですが、近寄って見れば大小様々な渦模様が二本の細筆を用いて実に緻密に描かれており、その筆にまったく乱れがないところにはただ驚愕するばかり。超絶技巧との声があがるほどの素晴らしさでありました。
主茶盌は先述の通り平の斗々屋茶盌で銘「岩清水」。御銘共々夏らしいもの。替茶盌は献上薩摩と呼ばれる色絵の薩摩焼。雲模様の中に鵜飼の風景が描かれているとことから、花入とも繋がるお道具組でした。また茶杓はご流祖作の銘「孔雀」。節下が通常よりかなり長いことからの御銘ではないかとお教えいただきました。
何分にも真夏日となったこの日。しかも土曜日ということで、境内では骨董市が開催され、隣接する学校からは生徒さんたちの声も聞こえてくるといった普段の護国寺様のお茶会とは様相の異なる一日でしたが、そんな中であえて障子を開け放ち風通しを良くし、外部の雰囲気を取り込みながら、見事なお道具組によってお席に静けさと清涼感が保たれていたことは大変な驚きであり、後日何度思い返しても、不思議と涼しげな印象だけが残っている六月十日「不白敬和会」〈不昧軒〉のお席でありました。
なお、当日配布された各席のお会記を以下に転載いたしますのでご参照下さい。
【当日の会記】
護国寺〈不昧軒〉
主 川上閑雪
床 流祖筆 雨ノ画讃
花  大山蓮華 河原撫子 鉄線
花入 鵜籠
香合 青貝 蟹
風炉 釜 芦屋切合
風炉先 流水紋
棚  木地 雪輪棚
水指 染付
茶器 うず 松亭造
茶盌 斗々屋 岩清水
替 薩摩 鵜飼ノ画
茶杓 流祖作 銘 孔雀
建水 高取
蓋置 胡銅 笹
御茶 松の齢 松華園詰
菓子 あじさいきんとん
鶴屋八幡製
器 縁高
〈艸雷庵〉(立礼席)
主 小川宗洋
寄付
床 吉川英治筆 林泉市近幽更幽
本席
床 布袋図 探幽筆 天室和尚賛
香合 月日貝 有元容子絵
花入 白い花筒 八木一夫作
風炉 鉄八角
釜  南鐐真形
水指 高麗刷毛目三嶋
茶器 嵯峨棗 流水紋
茶碗 御本 花橘
替 角倉一方堂焼 みそぎ図
茶杓 松枝不入 銘浮舟 共筒 共箱
建水 砂張座 横谷宗眼作
蓋置 切子 河上恭一郎作
御茶 初音 奥西緑芳園詰
菓子 上り羊羹 半田松華堂製
器 金縁バカラ鉢 他
〈楓の間〉
主 中村宗正
床 江月宗玩筆
時々日日 日日時々
脇 鳥蒔絵茶箱
花入 唐物写 七宝籠 宗正作
香合 堆朱丸
釜  車軸釜 かまきり鐶付
髙橋稲葉造
風炉 唐銅
長板
風炉先 河骨結界
水指 南蛮砂張平
茶器 早乙女蒔絵 桃山時代
茶杓 不白作 新樹 共筒 共箱
茶碗 堅手 松風
替 祥瑞平 竹泉作
建水 高取
蓋置 切子型 久宝作
菓子 わかむらさき ときわ木製
器 根来朱盆
替 春慶塗 壷仙形
以上
(「孤峰―江戸千家の茶道」平成29年7月号より)

「不白敬和会」大きく障子が開け放たれた〈不昧軒〉
「不白敬和会」〈不昧軒〉お点前をされる峯雪先生
〈不昧軒〉お客様にご挨拶をされるお家元

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