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平成二十八年十月号 其の四

2016年10月25日(火)

平成二十八年度江戸千家不白会
東京支部正会員研究会
九月二十二日(木・祝)
(江戸東京博物館ホール)
平成二十八年度江戸千家不白会「東京支部正会員研究会」が九月二十二日の「秋分の日」に、両国の江戸東京博物館大ホールにて開かれました。隣接する国技館では秋場所の真っ最中。両国の街は多くの人で沸き立っておりました。
九月は台風ばかりで不順な天候が続き、当日も朝から生憎の大雨。それでも開場のかなり前から大勢様がお待ちになっており、午前十一時の開場時間には長蛇の列に。皆様の熱意には本当に頭がさがります。
定刻通り正午に開会。初めに東京支部長・翠鶴先生より開会の御挨拶があり、悪天候のなか早くからお見えになった方々に対し懇切な御礼の言葉を述べられました。続いてお家元、若宗匠が御登壇に。お家元から本年も諸行事が滞りなく進んでいることへの謝辞と、本日の講習内容についてお話があり、次いで若宗匠は岐阜大学で半年間留学生の方々へ茶道と日本文化について講義された際の感想とともに、伝統文化の中にある相手を思いやる心にこそ普遍的な価値があり、御茶を通してこの心をより一層広めてゆきたいと御挨拶を結ばれました。
今回の「正会員研究会」の内容は次のとおり。
・講演「利休のことば」
講師:熊倉功夫先生
・講習 お家元宗匠御指導による
「立礼にて
炭点前、濃茶点前、薄茶点前」
熊倉功夫先生の「正会員研究会」での御講演は平成二十一年以来のこと。今回は昨年秋に出版された御著作『日本人のこころの言葉 千利休』(創元社)をもとに、「南方録」や「山上宗二記」等から利休居士の言葉をいくつか摘出し、それぞれに現代語訳を付記した資料をご用意いただいたうえに、さらに解説を加えて下さいましたので大変に分かりやすく拝聴できました。
例えば最初に〈もてなしとは何か〉と題されて、「南方録」から次の言葉をあげられました。
水を運び、薪をとり、湯をわかし、茶をたてて、仏にそなえ、人にもほどこし、吾も飲む。
ここで重要なのは後半部の「仏にそなえ、人にもほどこし、吾も飲む」。利休居士は御茶を仏様やお客に対してだけでなく、自分も飲む(楽しむ)ことが茶の湯であると説いておられる。そこから導かれたお話は、当今言われる「おもてなし」が一方的なサービスの提供を指しているのに対し、本来ある日本のもてなしとは、お客様と亭主の双方に得るところがある「他利」と「自利」の関係性の中で成立しており、さらに大切なのは、東京五輪で多くの海外からのお客様を迎えるにあたって、単にもてなすだけでなく、相手の文化、つまり異文化への理解を深めることであるとも。異文化への理解なくして自国文化の理解は出来ないとのお言葉を重く受け止めた次第です。
その他にも御茶を嗜む方々にとっては必ず憶えておきたい興味深いお話が次々に広がってゆき、瞬く間に一時間あまりの時間が過ぎてゆきました。時に会場に笑いが起きるなど熊倉先生の優しいお人柄が伝わってくる暖かな御講演でありました。
二十分の休憩時間を経て、舞台上には立礼席が設えられ、お家元御指導によるの「立礼にて炭点前、濃茶点前、薄茶点前」が始まりました。正客・次客・三客・お詰に東・半東の六名様による講習はお席入りから。床にはご流祖筆「武蔵野の画讃」。誠に初秋に相応しい御軸。
茶の道はたとるも広しむさし野の
月のすむなり奥ぞゆかしき
いつものようにお家元はマイクを手に順次お点前を解説されます。立礼での炭点前は隅炉での炭点前とほぼ同じながらいくつか違うところがあり、また立礼席でのお炭の拝見の仕方なども細かに御指導に。高円卓にはご流祖好浄元作の剣釜。続いて香合の拝見。お家元から「今日はご流祖の画讃にあわせて虫を三匹ほど入れてみました」と伺いましたが、その一匹目が香合に青貝での鈴虫。懐石は略して御菓子をいただき中立に。後入となって濃茶、薄茶点前へ。濃茶では茶入が銘「武蔵野」、ご流祖箱書のある薩摩には松虫の画。茶碗は御本、茶杓は一元斎作、銘「鳴子」。薄茶では茶器が蟋蟀蒔絵の棗。茶碗は白薩摩、丹波焼の掛分け、瀬戸、大阪木原窯の四碗。薄茶では気に入ったお茶碗でさらに一服を希望できますので「少なくとも二服くらいはいかがですか」とお家元が仰有ると皆さんも笑顔に。お家元によって終始和やかな雰囲気に包まれていたこの日の講習でありました。
最後になりますが、今年も二時間弱に及んだ講習時間を立ったまま御指導をされ、解説をして下さったお家元の御姿に強い感銘を受けたことを付記させていただきます。





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