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2019年8月25日 「御茶事体験会」報告

2019年12月13日(金)
本項は少々異色の記事になりますが、若宗匠による新しい試みに参加させていただきましたので、その御報告をいたします。
ご案内状に「茶道の経験のない方にも、茶の湯のたのしみに触れて身近に感じていただける機会として企画いたしました」とありましたが、まったく御茶に馴染みのない方々に「御茶事」を体験していただくという大胆な試み。「御茶会」ではなく「御茶事」ですから驚きです。実は昨秋にすでに一度試されており、今回はその第二回。また正式名称「PaPa茶会」とは、根津のお店「CLANPaPa」の関係者や御常連の方々が中心メンバーとなって発足した会であることからだそうです。
当編集部も「御茶事」の取材はほぼ初めて。いつになく緊張して江戸千家会館へ向かいました。
八月二十五日(日)午後三時から。ご参加の人数は二十六名様。こちらを何組かに分けて、それぞれに一名ずつ心得のある方を指導役として配され、全体の正客を東京支部の山田裕雪様が務められて、先達の役割を果たされておりました。また峯雪先生や智大様も加わって若宗匠をサポートされました。
当日の流れを簡単に記しますと、まずは会館一階が寄付となり、初入りは二階〈担雪軒〉へ。ここで若宗匠が本日の趣旨や御茶事の流れを述べられ、懐石は三階〈大広間〉が椅子席となっておりこちらに移動。長時間の正座などの負担を出来るだけ少なくしようという御配慮であります。懐石の後はまた〈担雪軒〉に入り若宗匠による炭点前。そして中立となって一階寄付へ戻り、銅鑼の音を合図に〈担雪軒〉へ後座入りし若宗匠による濃茶点前。この後、立礼席に改められた〈大広間〉に移り、峯雪先生の点てられた薄茶を頂いてお開きとなりました。
当日のお会記を御一読下さればお分かりの通り、お道具組はまさに本格的。田村斎彦氏による特別懐石も、正式なお懐石に則して進められましたから、つまりほぼ本格的な御茶事であり、違う点は何かと言えば、まず参加者のほとんどが茶道未経験者であるとか、夏なのに午後三時開始だとか、長時間の正座はつらいので椅子席・立礼席を用いたとか、最低限の節度をわきまえて貰えれば洋装でも構わない、といった些末な点――但し未経験の方ならば結構重要視される点――の違いだけなのです。正直申しますと新機軸の試みですから、ちょっと変則的な会なのではと考えておりましたが、そんな予想は良い意味で見事裏切られました。御茶とは縁遠い方々にあえて「御茶事」を体験してもらうという若宗匠の御発意は、ある種〝逆転の発想〟と言うべきものでありましょう。
まだ第二回目とはいえ、その意義は非常に大きく、こうした新たな試みがより幅広く展開してゆくことを強く希望しております。
〈会記〉
時 令和元年八月二十五日(日)
於 江戸千家会館
主 川上紹雪
【茶事 初座 担雪軒】
寄 付
床 当代筆 横物 福寿
莨盆 常什
火入 常什
莨入 常什
煙管 常什
担雪軒前 廊下 道善猊下筆 扇面 涼風
懐 石
床 森村宜永筆 千代女
本 席
床 不白筆 一行 鳥啼山更幽
脇 一元斎筆 扇面 韻自高
釜  常什 真形
風炉  常什 鉄 切り合わせ
台目棚置きて
炭斗  網代籠
香合  青貝 一文字 麒麟
羽箒  野雁
火箸  鉄
鐶   唐草象嵌 五郎左衛門造
釜敷  藤組(常什)
灰器  常什 備前緋襷
灰匙  一元斎好 鉄 雪輪紋 治郎兵衛造
【茶事 後座 担雪軒】
本 席
床 ―花入 向掛けにて―
花  鉄線(白花)
花入 益田鈍翁 寸切 銘 微妙香潔 共筒
   台目棚置きて
水指 木地 釣瓶
茶入 瀬戸 肩衝 銘 瀧浪 不白書付
茶盌 粉引 平
 替 今高麗 平 蕎麦 日呂志造
 替 今高麗 平 斗斗屋 日呂志造
茶杓 大亀老師作 銘 緑陰 筒箱共
 建水 木地 曲
 蓋置 青竹 引き切り
御茶 好 千代の昔 味岡松華園詰
菓子 若葉蔭 虎屋黒川製
 器 溜 糸目 銘々
【薄茶 三階大広間】
本 席 ―立礼―
床 一元斎筆 画讃 白浪漲天
花  吾亦紅 女郎花など
花入 唐物 手付籠
香合 馬国 漆絵 馬国にて求む
棚  当代好 高円卓
釜  不白好 剣釜 庄兵衛造
水指 朝日 月白釉流し 平 豊斎造
茶器 溜 松波蒔絵 棗 近左造
茶盌 紹雪手造 無地刷毛目 馬盥
 替 仁清写 浪の図 七世道八造
 替 色絵 流釉舟絵 嘉祥造
茶杓 鼈甲
 建水 高取 累座 正久造
 蓋置 鍍銀 水玉透かし 烈造
御茶 当代好 深雪の白 山政小山園詰
 器 砂絵蒔絵 有純造
以上

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