2018年5月13日 東京茶道会茶会(五月)
2018年09月27日(木)
五月の「東京茶道会茶会」は十三日(日)に護国寺において開かれ、江戸千家からは岩﨑宗晴様が〈牡丹の間〉にてお席主を務められました。
数日前から寒暖差の激しい日々が続き、この日も時折陽が差す薄曇の一日でしたが、お席では若葉青葉の季節らしい明るく華やかなお道具組を訪れられた多くのお客様方とともに堪能いたしました。
〈牡丹の間〉の床には大徳寺第四三五世・大綱和尚筆の一行「松風清心耳」。「七十七翁大綱書」とあり晩年の書と思われますが、軽みのある枯れた感じが清々しい御軸でした。お花は珍しい五種の取り合わせ。特に紫先代萩について御質問が相次ぎました。立派な花入は会記に唐物手付籠とのみ記されておりましたが、実はお席主の岩﨑様の御主人による作。永年池田瓢阿先生の許へ御稽古に通われて技術を習得されたそうで、毎月瓢阿先生と御原稿の遣り取りをしている当方としてはより親近感を覚えた花入でした。さらに香合は音丸耕堂作の蛙。耕堂氏の作品はたびたび善通寺のお茶会で拝見しましたが、耕堂氏とも大変親しくお付き合いがあったとお聞きしまた吃驚。脇床の青貝四方盆がまた見事な作で、こうした作品にご流祖の箱書が添っているのも珍しいのだそうです。
真塗の長板に風炉釜は奥平了保作の霰真形釜と名越浄味作の八角唐銅風炉。この組み合わせがお客様からは好評でした。一方水指は色鮮やかに波に青楓が描かれた四代眞葛香斎の作。同じく華やかだったのが茶器で輪島塗の静峰による光琳八ッ橋蒔絵の中次。対照的に重厚感があったのが風炉先で、堅い鉄刀木(タガヤサン)に網目七宝模様を緻密に施した見事な作。
主茶盌はお濃茶席でも使えそうとの声が出たほど存在感のある半使。替茶盌は京都の大仲翠月の作で、陶器に蒔絵を施す蒔絵漆装は江戸時代からあったそうですが今日では珍しい技法。外側の扇面に菊、内側の扇面にはアヤメが描かれておりました。茶杓はご流祖の作で銘「高砂」。分厚くご流祖らしさが感じられました。
その他のお道具組の詳細は以下のお会記を御覧いただきたいと存じますが、最後に菓子器について、会記の左入作の白磁牡丹皿とは別に使われていた呉須の大皿も誠に見事な作であったことを書き添えておきます。
〈会記〉
平成三十年五月十三日
東京茶道会茶会
於 音羽護国寺「牡丹の間」
主 岩﨑宗晴
床 大綱筆
松風清心耳
脇 唐物青貝四方 流祖不白箱
花 木葉の随菜 姫百合 紫先代萩
二股一華 壺珊瑚
花入 唐物手付籠
香合 蛙 音丸耕堂造
釜 霰真形釜 了保造
風炉 唐銅 八角鬼面釻付 浄味造
先 網目七宝 昇斎造
長板 真塗 若島高雄造
水指 波ニ青楓 眞葛香齋造
茶器 光琳八ッ橋蒔絵 静峰造
茶盌 半使
替 扇面 大仲翠月造
茶杓 流祖作 銘 高砂 共筒
建水 高取 高取静山造
蓋置 南鐐 雪輪
御茶 寿泉の白 ほ里つ詰
菓子 卯の花 目白 志むら製
器 白磁 牡丹皿
樂吉左ヱ門 左入造
以上
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