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2018年10月14日 川崎大師「御供茶式」神奈川支部「秋季茶会」

2019年01月18日(金)
十月の第二日曜日には毎年秋の恒例行事、川崎大師平間寺様での「御供茶式」が行われます。本年もお家元が大本堂において御供茶をされました。また当日は例年通り不白会神奈川支部様の「秋季茶会」も開かれ、「御供茶式」共々多くの皆様方がご参集になりました。

御供茶式

お家元による御供茶勤仕は今年で三十一回目に。朝方には降雨があったものの、やがて時折陽も差すような日和になり、お式が開かれた大本堂には早々から御流儀の皆様や一般の御参詣の方々で一杯になっておりました。
午前十時十五分、境内大本坊からお練りの列が出発。僧侶方の御先導に続いて大きな朱傘の下、御貫首藤田隆乗猊下が進まれ、お家元、翠鶴先生、若宗匠、峯雪先生、ご社中の方々や関係者の皆様が続いて御入堂になり、堂内右手奥の壇上に着座されました。
定刻の午前十時三十分、厄除け祈願の特別大護摩法要が開始。まずは御案内を受け堂内の参列者一同が合掌し御宝号「南無大師遍照金剛」を五回唱え、次いで「祈願文」の読み上げに。御本尊「厄除弘法大師」の縁起から説き起こされ、仏信篤いお家元の仏恩報謝の御供茶が永年にわたり続けられていること、そして参列者の「家門繁栄」「諸願成就」「茶道精進」などが祈願されました。
続いて大太鼓が鳴り響き大導師猊下による大護摩供が始まります。大護摩の炎が大きくなるのに合わせて、お家元と若宗匠が内陣に設置された紫の布に囲われた点前座へ進み出られて、御供茶の儀へと移りました。お家元が丁寧に点てられた御茶は、若宗匠の手から僧侶方にわたり御本尊様のご宝前に供えられますと、僧侶方の読経の声も一段と大きくなり、堂内はより荘厳さを増してゆきました。

神奈川支部秋季茶会

「御供茶式」も滞りなく終了し、午前十一時よりお茶会が開始されました。神奈川支部の皆様による今年の「秋季茶会」は次の三席です。
〈第一席〉中書院「広間」(濃茶)
霜田宗岱
〈第二席〉中書院「光聚庵」(薄茶)
末高宗泰
〈第三席〉客殿前総受付前(立礼)
宮澤幸雪
〈第一席〉の中書院「広間」は神奈川支部長・霜田宗岱様がお席主をお務めの濃茶席。
大きな床には迫力ある一行、大徳寺第三七八世無学和尚筆の「鑊湯無冷處(かくとうにれいしょなし)」。鑊湯とは熱湯のことで、湯が煮えたぎった釜の中には冷たい所は無いという意から、何事も雑念を持たず一心不乱に修行せよとの教えが導き出されます。
「茶道精進」にも通じる心に刻んでおきたい禅語。濃茶席に相応しい御軸でありました。
花入はご流祖作の竹一重で銘「東方朔」。東方朔は前漢の武帝に仕えた文人。ユニークな言動で知られ、仙人となって長寿を得たなど古来より伝説が多い人です。この花入には梔子と浜菊が生けられましたが、御軸の雰囲気と合った清楚さが感じられました。
ご流祖好の菊桐地紋透木釜は御宗家所蔵のものと同じく名越弥五郎作。とても稀少なお釜ではないかとお聞きしました。十五代新兵衛作の水指も珍しく、少し裾広がりの造形も独特。こちらは今日が初使いとのことで、お客様方も大変に喜んでおられました。お茶盌は東大寺長老・上野道善猊下作の赤樂で銘「瑞雲」。濃茶席で樂茶盌を用いることはあまりないそうですが、大きく立派な存在感からあえて使われたと。茶杓もご流祖作の銘「千代の友」。
〈第二席〉は末高宗泰様がお席主の「光聚庵」での薄茶席でした。
床の御軸は大亀老師筆の「秋気清」。薄っすらと金で芒などの秋の画題が描かれていた画讃だったので少々吃驚しました。臑当て籠の花入も珍しく(和田鱗司作)、しかも十三種の秋の草花がたっぷりと。金地に蟋蟀が描かれた香合は月のお見立て。明るい「光聚庵」らしく華やかな床になっておりました。
大板に中置のお道具組でお話の中心になったのが藤田宗勝作の「琉球風炉」。お客様からの御質問も多く、香狭間の上下が大きく、肩が丸いのが特徴的だとお教えいただきました。主茶盌は渋い色合の古萩で高台が独特の形をしているのが興味深く、対して替茶盌は華やかな京薩摩で岡田暁山作。西行の旅が描かれたこれまで拝見したことのない画柄でした。あわせて並べられたのは、四君子が画かれた京織部のお茶盌と清閑寺焼(杉田祥平作)の尾花透かしの蓋置。彩り豊かな京焼三種を揃えられた御趣向にも感じ入りました。
〈第三席〉は客殿前総受付前に設けられた立礼の呈茶席で、本年は宮澤幸雪様が席主をお務めに。毎年この日は七五三参りのお子さんが多いことから、健やかに育つようにとの願いを込めたお道具組を心掛けられたと承りました。
床の御軸は妙心寺第二五代管長・逸外宗實筆「無心」。お席の趣旨に則したお掛物。時代の木籠にお花は七種。香合はミル貝で仙人画を象嵌した見事な唐物。
お好みの高円卓にお釜は筒釜の一種で色紙釜。胴に色紙型の枠、その中に和歌や画が鋳され、笛の鐶付も珍しい凝った作でした。古染付の水指には時代を感じさせる落ち着きがあり、主茶盌は青磁、替茶盌は高麗青磁写でどちらも平茶盌でしたが、ここには青空に広がるイメージを籠められたと。蓋置の「六瓢」は子供達の「無病」を祈念されたそうで、親しみやすさの中にお席主の気持ちが静かに伝わってくるお道具組になっておりました。
その他、各席の詳細につきましては次に掲載しますお会記をご参照下さい。
〈第一席〉中書院 広間(濃茶)
主 霜田宗岱
床 無学筆 鑊湯無冷處
花  梔子 浜菊
花入 不白作 銘 東方朔
当代閑雪宗匠極
香合 蓬莱山 翠香造
脇 籠地 硯箱 秋野蒔絵
風炉釜 流祖好 菊桐地紋透木釜
風炉先 当代好 雪月花透かし
水指 萩 十五代坂倉新兵衛造
茶入 伊勢春慶
銘 知足 当代家元箱
仕服 細川緞子
茶碗 赤樂 銘 瑞雲
東大寺道善老師作
茶杓 流祖作 銘 千代の友
建水 不審庵 伝来写
蓋置 夜学
御茶 好 千代の昔 味岡松華園詰
菓子 きんとん 松埜茶の子製
器 縁高
〈第二席〉中書院 光聚庵
主 末高宗泰
床 大亀老師筆 秋気清
花    木苺の葉 上臈杜鵑 雁金草
晒菜升麻 花朮(おけら)
蓼 秋月菊 芒
吾亦紅 泡黄(あわこ)金菊 大草牡丹
河原撫子 岩沙参
花入 唐物写 臑当て籠 鱗司造
香合 秋草蒔絵
風炉 琉球風炉 宗勝造
釜  霰 馨鉄造
先 一元齋好 菊桐
棚  大板
水指 染付 山水 尾戸焼土居正次
茶器 雲錦 一兆造
茶碗 古萩
替 京薩摩 西行物語 暁山造
茶杓 当代家元作 銘 鳴子 筒箱共
建水 紫交趾唐草彫 翠嵐造
蓋置 尾花透かし 祥平造
御茶 深雪の白 小山園詰
菓子 玉菊 寿々木製
器 現川焼 十三代臥牛造
〈第三席〉客殿総受付前(立礼)
主 宮澤幸雪
床 妙心寺管長筆掛物 無心
花   秋明菊 鷹の景芒 大文字草
乱菊 水引 女郎花 岩沙参等
花入 時代籠
香合 みる貝
立礼棚 当代家元好 高円卓
釜  色紙釜
水指 古染付
茶器 中次 竹林 輪島
茶碗 青磁
替 高麗青磁写 
茶杓 紫野剛山作 銘 武蔵野
建水 インカ ペルー
蓋置 瀬戸 六瓢 月村正比古
御茶 松の齢 味岡松華園詰
菓子 嵯峨野 コスモス
鶴屋吉信製
菓子器 輪島
以上
いずれのお席でも、秋らしいお道具組の中にお席主によるしっかりとした主題が強く感じ取れた「神奈川支部秋季茶会」でありました。

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