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2018年11月16日 大徳寺塔頭玉林院「洞雲会月釜」若宗匠席持

2019年01月18日(金)
十一月十六日の金曜日、京都大徳寺塔頭玉林院様での「洞雲会月釜」おいて、若宗匠が席持をされました。若宗匠が〈洞雲庵〉に懸釜をされるのは昨年の五月以来。
少し冷え込んだとはいえ、秋らしい快晴に恵まれた気持ちの良い一日。多くの方々がお出ましになり、落ち着いた〈洞雲庵〉でのお茶席を楽しまれてゆきました。
繰り返しになりますが、玉林院はご流祖が如心斎宗匠とともに参禅された塔頭。重要文化財指定の茶室「蓑庵(さあん)」「霞床席(かすみどこせき)」は如心斎宗匠のお好みとして知られており、御流儀にとりまして御縁の深いお寺です。また〈洞雲庵〉は片桐石
州の師・桑山宗仙の建立。月三回の月釜以外通常は原則非公開ですから貴重な機会と言えます。
当日はお点前も若宗匠がお務めになり、半東には峯雪先生が入られました。床の御軸は季節感にピッタリのご流祖筆の自画賛、
下染のまたき時雨るや初紅葉
こちらは表装も素晴らしく、殊に中縁の淡い浅黄色とお花との配色の妙が仄暗い洞雲庵の床に映えておりました。花入は一元斎在判、竹の花入。無銘ながら不思議と時代感のある風情を持ち、花は白玉椿に目薬の木の照葉。このお取り合わせは京都のお客様には新鮮に映ったようで、毎回驚きの声があがっておりました。香合は二代自得斎手造、楽焼の鴛鴦香合。
お釜は大西二代浄清作の撫肩釜。ねっとりした膚に松原地紋、鐶付も松毬。炉縁は守屋松亭が黒地に金蒔絵で雪輪を美しく描いたもの。ご流祖好真塗の米棚には藍阿蘭陀の水指。その深い色合が棚やお席の雰囲気と合っておりました。
茶器も豊平翠香による美しい逸品。籬に紅葉や秋草が吹寄られた画は緻密で大胆な構図の棗でした。
口切り月らしく主茶碗には時代の黒織部。デザイン性の強い図柄が面白く、沓型茶盌というよりハート型に近い造形など見所の多いお茶盌でした。替茶碗は備中虫明焼。鹿に紅葉の画。時季に相応しいのは勿論ながら、鹿の顔がチャーミングという意外な声に若宗匠も笑顔に。
茶杓は初代住山揚甫作(共筒も)。節下に朱書で手許に花押、節下に「有馬筆」とありました。有馬(人形)筆とは、穂先を下に向けると軸から人形が飛び出すカラクリ筆。節の上下で片身変わりの色目になっており、白っぽい節上を人形に見立てた御銘ではないかとのこと。
また住山揚甫の姉上は如心斎宗匠に嫁がれましたので、櫂先が細い如心斎型なのもそうした御縁の深さからではないかとお教えいただきました。さらに共筒に「還暦賀」とあり、揚甫が贈った祝いの茶杓と思われますが、実は今年若宗匠も還暦に。是非今年のうちにお席でと思いながらその機会がなく、ようやく今回使うことができました、とお話になりますと席中のご一同が皆笑顔になり、〈洞雲庵〉が和やかな空気に包まれてゆきます。
蓋置は宗鶴師手造の赤楽。御茶はお好みの深雪の白、山政小山園詰。御菓子は紫野源水製の薄紅葉。
「今年は結構な月を頂戴いたしました」と若宗匠。本来なら秋真っ盛りの時期ながら、今年は秋の訪れがゆっくりで京都の紅葉も始まったばかり。しかも暦ではすでに「立冬」も過ぎ、そんな微妙な季節感を巧みに取り込みつつ、〈洞雲庵〉のしっとりした雰囲気に合った見事なお道具組にいつもながら感服した「洞雲会月釜」でありました。

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