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江戸千家不白会 青森支部五十周年 「記念茶会」「祝賀会」

2016年07月2日(土)

江戸千家不白会
青森支部五十周年
「記念茶会」「祝賀会」
六月五日(日)
六月五日の日曜日、青森市のホテル青森にて、不白会青森支部の創立五十周年を祝う「記念茶会」が開かれました。また同日夕刻より、同じくホテル青森において「記念祝賀会」も催され、県内はもとより、全国から大勢様がご参会になりました。

五十周年記念茶会は次の三席。
〈第一席〉家元席  五階 鶴の間
〈第二席〉支部長席 五階 竹の間
〈第三席〉立礼席  四階 錦鶏の間
この日、関東は梅雨入り。青森も前夜からの雨の影響が心配されましたが、朝方こそ曇空ながらやがて晴れ上がり、大きく広がった青空が気持ちの良い一日となりました。多くの方々とともに青森支部の五十周年をお祝いできましたのは嬉しいことでございました。
〈第一席〉家元席(濃茶席)が設えられた鶴の間は約四十畳の大広間。お家元と若宗匠がお点前をされ、半東には智大様が入られました。
横広の大きな床の間に御軸はご流祖参禅の師・無学和尚筆の一行「萬歳々々萬々歳」。お祝いの茶会らしいお目出度い語句。白と紫の二種の鉄線は清々しくかつ立派なお花。花入と香合はいずれも細工が緻密な手付唐物籠と杣田の香合。
釜はご流祖好菊桐透木風炉釜で、作は西村道也。流水紋の風炉先に、方円棚にはオランダ水指。形が平に近い珍しいもので、絵柄も色合も独特で楽しく、また飾茶器は一元斎好雪輪と雪花紋蒔絵の面中次。仕服は鳳凰紋の金襴。
茶入はご流祖の手造としては珍しい伊賀焼で銘「あけぼの」。写真を載せますが、色合こそ伊賀らしいものの、どこか面白味のある心が和んでくるようなお茶入でありました。
茶?は高麗刷毛目。胴がすっきりとした平茶?は濃茶席に合った重みを持ちながらもどこか涼しげな佇まいがあります。袱紗は土田友湖作で名物裂の一つ万暦緞子の写。茶杓もご流祖作でこれもお目出度い御銘「鳳凰」。蓋置は一元斎好宝殿写、建水は砂張。
御茶は千代の昔で松華園詰。御菓子はご当地亀屋八幡製、薄緑も美しい「若草きんとん」。菓子器は縁高。
記念茶会の濃茶席として祝意に満ちたお道具組の中に、初夏のお席らしく爽やかさが十分に感じられたお家元席でありました。
〈第二席〉が設けられた竹の間は窓から青森湾が望める誠に見晴らしの良い明るいお席。こちらは支部長・藤巻宗保様がお席主の薄茶席。客様の中には五十年前の発会式の思い出を話される方もお出でになるなど、終始和やかな雰囲気の中で御茶を頂きました。
床の御軸はご流祖米寿の折の筆「百福荘厳相」。これは法華経にある語で、辞書によると仏の特徴である三十二相は百の福徳を積むことで得られることから、一つ一つ徳(善行)を積み重ねてゆくことの大切さを説いているとのこと。まさしく五十周年の節目にあたって好適の御軸であります。また表装も素晴らしく、特に中縁と柱に用いられた青の揉み紙の美しさが目に残っております。
さらに脇床に飾られた『源氏物語』全五十四帖が揃った貝合せも豪華で立派なもの。お祝いのお席がより華やかになってゆきます。
十三代柿右衛門作の草花紋濁手水指も涼やかで、一方、十代大樋長左衛門作の大樋焼らしい飴色釉の主茶?と、初代真葛香山作の呉祥瑞の替茶?の取り合わせが好対照で明るいお茶席に似合っておりました。
〈第三席〉は四階・錦鶏の間にて。こちらは一転してぐっと落ち着いた雰囲気の洋間での高円卓による立礼席でした。
床にはお家元筆「恵風」。お若い頃に書かれたものではとお教えいただきました。雲錦蒔絵の香合は京蒔絵師一瓢斎の作。二閑人の祥瑞水指も独特の色合。また朱傘の足許には山野草がたっぷり生けられるといったご当地らしい御趣向も楽しめました。
主茶?の政所窯とは北政所(寧
々)所縁の高台寺塔頭圓徳院に作られた御庭焼。全体に薄いピンク色を帯びた華やかな作でした。対して替茶?は重厚感のある熨斗交趾で中村翠嵐の作。茶杓は萬拙和尚作の銘「青松」ですが、「景色の良いお茶杓ですね」との声が多く聞こえました。
なお〈第二席〉〈第三席〉のお道具組の詳細につきましては、以下に記します当日のお会記を御覧下さい。

〈第二席の会記〉
主 江戸千家不白会
青森支部長席
床 米寿不白筆 百福荘厳相
花  大山蓮華 都忘れ
花入 竹 銘 和心 大亀老師造
香合 黒柿 輪島 舟に柳 香作
釜  好 二十の内
六角切合  菊地正直造
風炉先 好 雪月花透 在判箱
棚  長板 爪紅
水指 濁手 草花紋
十三代柿右衛門造
茶器 好 雪花蒔絵 雪輪紋
   家元箱 修兵衛造
茶碗 飴茶碗 線文
十代大樋長左衛門造
替 呉祥瑞 初代香山遺作
内箱二代目香山極
茶杓 銘 青山緑水
大徳寺雪窓造
建水 萩 十一世坂高羅左衛門造
蓋置 青交趾 翠嵐造
御茶 松の齢 味岡松華園詰
菓子 初夏の空 松栄堂
器 猿投 杉本貞光

〈立礼席の会記〉
床 恵風 家元筆
花  先代萩 紫蘭 小判草
   芍薬 下野
花入 唐物籠
香合 雲錦蒔絵 一瓢斎作
釜  六角切合 敬典作
棚  高円卓 家元好
水指 祥瑞 二閑人濁手 竹泉造
茶器 雪花蒔絵 雅峯造
茶碗 政所窯 紹道造
替 のし交趾 翠嵐造
茶杓 銘 青松 萬拙造
建水 菊割南鐐 青雲造
蓋置 瓢透し真葛 香斎造
御茶 福昔 一保堂詰
菓子 紅小町・千代結 甘精堂
器 手付盆 輪島塗
以上

創立五十周年を記念する祝賀会はホテル青森〈孔雀の間〉にて午後五時より、大きな会場にテーブルが十七卓設置された盛大な祝宴となりました。
祝賀会は青森支部の白戸宗正様、川越宗圭様の司会進行のもと、まずは万雷の拍手の中、御来賓の方々、そして御宗家の皆様方がご入場になって開宴。副支部長・中崎宗桂様の開会の言葉に続き、青森支部を代表して支部長・藤巻宗保様より御挨拶があり、日頃よりのお家元はじめ御宗家及び御来賓の方々からの御指導に深く感謝の意を述べられたうえで、この五十周年を期に更なる研鑽を誓われて御挨拶を結ばれました。
次にお家元が御登壇になり、まずは御来賓の方々に、そして全国の支部からご参会の皆様に御礼を述べられてから、五十一年目に向け一層御稽古に励んで支部の発展に寄与していただきたいとの御言葉でありました。
続いて御来賓を代表して、青森県知事・三村申吾様、青森市長・鹿内博様、青森市文化団体協議会会長・山内和夫様より御祝辞を賜りました。
この後祝電のご紹介があり、若宗匠が登壇され乾杯の御発声を。若宗匠はご流祖が如心斎宗匠より「道具の好みは五十歳になってからにせよ」と教えられたことを紹介され、「五十年の成熟を経ていよいよこれからが青森支部の真価が発揮していただける時期に入っているのではと思っております」と述べられ、「おめでとうございます」の御発声を全員で唱和し、創立五十周年を寿ぎました。
ここからは御歓談、お食事の時間に移りましたが、御来賓の方々や全国の支部からお集まりの皆さんのご紹介もあり、やがて祝賀会の吉例であります上田支部長・小宮山宗輝様による日本舞踊の御披露に」。今回の演目は常磐津「夕月船頭」。川風の爽やかさが伝わって来るいかにもこの季節に合った見事な踊りに大きな拍手が起こりました。
次いで青森山田学園ねぶた囃子隊の皆さんによる「ねぶた囃子」「神幸囃子」「踊り囃子」の演奏が始まりましたが、はじめに手拍子が起こり、やがて支部の方々が跳人(はねと)となって会場内を文字通り跳ね廻るという光景に驚かされましたが、祝宴は大いに盛り上がってゆきました。
やがて締め括りとして須藤宗良様が御登壇になり、ご参会への感謝とともに閉会の辞を述べられて祝賀会もお開きに。
以上、青森支部の五十周年をお祝いした記念の一日の御報告まで。
東京茶道会茶会(五月)
―五月八日(日)護国寺
五月の東京茶道会茶会は八日(日)護国寺にて行われ、江戸千家よりは小邑宗和様が不昧軒にてお席主を務められました。
川崎大師のお茶会などではたびたび小邑様のお席を拝見しておりますが、護国寺でのお席持ちは初めてとのことで、「少々緊張しております」と仰有られておりましたが、お客様方からも「立派なお道具組ですね」との声が多くあったように、落ち着いた雰囲気のお席でありました。
床の御軸は三井髙福が描いた大黒天の画に六代了々斎鶴叟が讃を寄せたもの。
大黒のもつやつちのえ申の歳
嘉永元年の筆で〈宗六〉の印がありましたが、これは六代宗雪の意味。また三井髙(たか)福(よし)は三井家八代当主で中興の祖とも呼ばれ、鶴叟宗匠とも親交のあったともお教えいただきました。また香合は十一代一閑作の末広でしたが、初めての護国寺でのお席持ちに自祝の意も籠め選ばれたと承りました。
清閑寺焼の水指は金銀で描かれた荒磯の画。銀が時代を経てやや黒くなり味わい深いもの。矢筈長板にとても合う水指でした。また主茶?は而妙斎宗匠の箱書のある了入作の赤楽。御銘の「東凪」とは初めて知った語句ですが、波が穏やかな海の様子から、平穏無事の意があるとのことでした。
その他のお道具組については次の当日のお会記を御覧下さい。
〈会記〉
平成二十八年五月八日
東京茶道会茶会
於 音羽護国寺 不昧軒
主 江戸千家 小邑宗和
床 六代了々斎宗雪筆
大黒天画賛 三井髙福画
花  大山蓮華 萱草
花入 古銅 かご形
香合 末廣 十一代一閑作
脇 硯箱 矢車蒔絵
風炉釜 流祖不白好 透木釜
当代家元箱
風炉先 うるみ塗 前田千波作
棚  矢筈長板
水指 荒磯 清閑寺 祥平造
茶器 好 雪輪なつめ 家元箱
茶碗 楽 銘 東凪 了入造
而妙斎箱
替 薩摩 黄釉 税所家旧蔵
替 大樋 波の画 九代長左衛門造
茶杓 退庵作 銘 山家 式守蝸牛箱
建水 翡翠釉 磁洲窯
蓋置 三ツ葉 十一代陶兵衛造
御茶 寿泉の白 ほ里つ詰
菓子 薫風 青山 菊屋製
器 八角提重
以上
立夏直後のこの日は日差しこそ夏の強さがありましたが、不昧軒を吹き抜ける風が誠に心地よく、のんびりとした気分で御茶を頂戴できた不昧軒のお席でありました。









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