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第六十八回 江戸千家不白会 東京支部大会

2016年06月2日(木)

第六十八回
江戸千家不白会
東京支部大会
四月二十九日(金・昭和の日)
於 東京美術倶楽部
本年も四月二十九日に第六十八回となります江戸千家不白会東京支部大会が東京美術倶楽部にて開かれました。天候にも恵まれ例年通り大勢様がご参加になりましたが、この日の朝にお家元の叙勲が報道発表されたこともあり、お席主の皆様にはお道具の一部を組み替えられるなど思いがけずお祝いの大会となりました。
本年のお席は次のとおり。
第一席 花の間(濃茶) お家元席
第二席 月の間 霜田宗岱
第三席 雪の間 大阪教場
第四席 済美庵 大内宗心
第五席 (立礼) 宮崎宗房
第六席 川上宗悦
第七席 (おしのぎ席)
第一席〈花の間〉は濃茶席。お点前をお家元と若宗匠が交代で務められ、半東には智大様が入られましたが、最初のお席でお家元がお点前を始められますと館内アナウンスでこのたびの叙勲の報が流れ、お客様方から一斉に拍手が。お点前中のため無言ながら、お家元がちょっと手を止め御辞儀を返されますと、〈花の間〉は誠に祝意に満ちたお席となりました。
床の御軸はご流祖筆、春秋の双幅「花知一陽春」「月知明月秋」。豪快な筆使いの双幅が大きな床の間に映えます。また通常は「花知一様(、)春」「月知天下(、、)秋」と書かれることの多いこの語句をご流祖があえて変えているところも見所とのこと。古銅の尊式花入には見事な牡丹。香合は旦入作の朝日香合。
釜は大西二代浄清作、遠山の鐶付で首から肩にかけて霰地紋のある鶴首釜。京釜らしく薄作りの釜ですが不思議と熱くならないとのこと。祥峰棚にはご流祖好の辻焼、丸紋付末広型の水指。飾茶器は梨地の平棗で一元斎好、雪輪蒔絵。
茶入はご流祖の箱書のある瀬戸春慶の肩衝、銘「若草山」。とても珍しいとのお客様からの声がありました。仕服は金襴。
茶?は高麗半使。丸蓋の表には「朝鮮焼」とのみ記され、蓋裏には古筆了信の張紙極があり、この三文字は小堀和泉守政峯の書であるとの極め。微妙な色合いとすっきりした佇まいが特徴のお茶?でした。出袱紗は如意棒や筋斗雲が散りばめられた西遊紹巴。
茶杓はご流祖の作としてはやや長めという銘「孔雀」。蓋置は蓮々庵在判宝殿写。建水はお好みの砂張。御茶は「千代の昔」松華園詰。御菓子は毎年〈花の間〉恒例で色鮮やかな鶴屋八幡製「緑」。菓子器は縁高。
〈花の間〉では午前中のお運びがすべて青年部の男性陣が務められるなど、御軸の双幅ともども例年になく渋い雰囲気。そこに叙勲の報が加わりましたためより一層深みのあるお席となりました
紙量の関係上「第二席」から「第六席」まで詳細につきましては以下の当日のお会記をご参照いただきたいと存じますが、短く各お席の印象を記しますと、〈月の間〉では床の御軸が無学和尚筆の一行「?湯無冷処(かくとうにれいしょなし)」。これはお席主の霜田宗岱様がお好きな言葉で、しかも安倍首相の訓辞にも用いられ改めて注目されている禅語とのこと。〈雪の間〉はお家元がお道具を組まれたという大阪教場様のお席。たびたびお家元も席入りされ御挨拶を。にこやかにお点前を見守られておりました。小間の〈済美庵〉では大内宗心様がお席主に。こちらでは了入作の黒楽茶?の立派さと茶器の碌々斎在判の中次の美しさが印象に残っております。3階に移って「立礼席」のお席主は宮崎宗房様。武蔵鐙などの多様な花々を楽しく拝見。また水をテーマにしたお道具組で、景徳鎮の水指と川瀬竹春作の蓋置を輪花で揃えられたり、あるいは若宗匠手造の落ち着いた主茶?と善五郎作の華やかな替茶?など取り合わせの妙が感じられました。「第六席」のお席主は川上宗悦様。御軸の「面善円浄如満月」は宙宝和尚筆の一行。穏やかな心境を表した経文の一節とのこと。お席も特設でありながら実に落ち着いた雰囲気。また鳳凰眉尾垂釜や紹?水指棚も珍しく、こちらにぴたりと収まった美濃焼の水指は加藤偉三の作。いずれも独特の趣きがありました。

《会記》
第二席〈月の間〉 主 霜田宗岱
床 前龍寶 無学筆
?湯無冷処
花  虫狩 紫蘭
花入 唐物写 輪光耳付 和田鱗司作
香合 唐物 宝珠青貝
風炉 蓮華庵好 透木風炉
釜  真形釜 名越弥五郎造
先 当代好 雪月花透し
棚  亀甲棚
水指 時代 青磁 唐草花紋
茶器 住吉蒔絵 前畠春斎作
茶碗 当代家元箱 銘 佳色
朝日豊斎作
替 初代宮川香山 真葛焼
茶杓 一元斎不白作 銘 かちどき
建水 南僚
蓋置 好 雪輪 高取味楽作
御茶 深雪の白 小山園詰
菓子 佐保姫 赤坂塩野製
器 白磁鉢 井上萬二造
以 上
第三席〈雪の間〉 主 大阪教場
床 不白筆 柳画賛 花紅
花  大山蓮華・都忘れ
花入 籠 唐物
香合 青貝 唐物
風炉 欄干 治良兵衛作
釜 治良兵衛作
風炉先 水流紋
棚  霞棚
水指 南京染付 獅子耳付
茶器 金地 八ツ橋
茶碗 花唐草 弥平太造
替 ぼたん 白薩摩
茶杓 一元斎宗匠 矛
建水 瀬戸
蓋置 赤絵 唐子 永寿造
御茶 青峰の白 ほ里つ詰
菓子 初かつお 美濃忠製
器 縁高
以 上 
第四席〈済美庵〉 主 大内宗心
床 萬歳々々 江雪筆
花  きふじ クリスマスローズ
花入 流祖不白在判 尺八
香合 横唄 善五郎造箱
釜  四方口 肩衝釜 茂昌造
炉縁 しぼり 丸太
水指 上野
茶器 中次 好 碌々斎在判箱
茶碗 黒 了入
替 朝鮮唐津
茶杓 銘 丹頂 流祖不白作筒箱共
建水 不昧好 曲 好治作
蓋置 竹 当代家元在判箱
御茶 松の齢 味岡松華園詰
菓子 あやめ ふくや製
器 縁高
以 上
第五席(立礼) 主 宮崎宗房
床 不白筆 春山千古翠 箱 共
花  蛍袋 武蔵(ムサシ)鐙(アブミ) 丁子草・都忘れ二種 紫蘭 姫檜扇(ヒメヒオウギ)二種 突貫(ツキヌキ)忍冬(ニンドウ)
花入 時代かご
香合 丹頂高盛絵 一国斎作
釜  車軸釜 吉羽與兵衛造
棚  当代好 高円卓
水指 染付 桶川 景徳鎮
茶器 六代鶴叟
木賊束にうさぎと云 箱書付
茶? 紹雪手造 銘 春望 箱 共
替 掛切 芦に翡翠 永楽善五郎造箱共
茶杓 当代作 銘 青柳 筒箱共
建水 曲 漆器
蓋置 青華蓋置 竹春作
御茶 寿泉の白 ほ里つ詰
菓子 楓 清流 菊家製
器 四方盆 黒 一閑塗 宗恵作
以 上
第六席 主 川上宗悦
床 面善円浄如満月 宙宝
花  クレマチス二種
花入 唐物手付籠 瓢阿作
香合 文箱 時代
風炉釜 鳳凰眉尾垂釜
風炉先 如心斎好 杉捻梅透
棚  紹?水指
水指 美濃焼 銘 蓬莱 偉三造
茶器 流祖つぼつぼ 一閑作
茶碗 黒 九代了入造
替 粉引 豊蔵造
茶杓 当代御家元 銘 福寿
建水 唐銅 浄益造
蓋置 赤 十二代弘入造
御茶 深雪の白 小山園詰
菓子 滋賀の里 とらや製
器 三島唐津草花文
十二代太郎右衛門造
以 上







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