東京茶道会茶会(四月)
四月十日(日)護国寺
四月の「東京茶道会茶会」は十日に護国寺にて開かれ、江戸千家からは澤田宗直様が圓成庵にてお席を持たれました。
境内の染井吉野は葉桜ながら枝垂れや八重はちょうど満開。まだまだ春を満喫できる護国寺で、日頃多くの諸行事で進行役を務められる澤田様がお釜を懸けられるとあって、朝早くから御流儀の方々が大勢様お見えになり、終日大いに賑わったお席でありました。
床の御軸は「春興」と題された大綱和尚筆の一首、
山寺に((尓))住みかいあきて長き日に
楽しみながき花色の里
常滑の花入にお花はムシカリとやぶ椿。もう一重の椿が見付からずご苦労があったとのこと。香合には今がちょうど「水温む頃」であることから樂家九代了入作の水鳥を選ばれたとも。
釜は後掲の会記には「霰」とのみ記されておりましたが、獅子面鐶付で梵鐘型の霰釜という見所の多いお釜で古芦屋ではなかというお話にも納得。東大寺古材という炉縁もほぞ穴あり虫喰いの跡ありという面白いもの。さらに朱書で東大寺長老・上野道善猊下の花押もあり、お尋ねしたところ、東大寺二月堂修二会(お水取り)にて上野道善猊下が導師を勤められた際に結界として使用された貴重な材であるとのこと。
水指は時代の備前。富士を象ったもので誠に落ち着いた佇まい。茶器はご流祖好の烏帽子。
主茶?は高麗とあり猫掻きこそないが金海ではないかと。また替茶?は十代長左衛門作で、いかにも大樋焼らしい飴色釉の強い見事なお茶?でした。茶杓はお家元作の銘「瑞霞」。
お席主の澤田様のお話では、季節的に春というには遅く、初夏とも言えず、今回お道具組には苦心されたとのことでしたが、行く春を惜しむ気分が十二分に感じられたこの日のお席でありました。
〈会記〉
平成二十八年四月十日
東京茶道会茶会
於 音羽護国寺 圓成庵
主 澤田宗直
床 大綱筆 和歌一首
春興 高安和尚箱
花 ムシカリ・やぶ椿
花入 常滑
香合 水鳥 了入造
釜 霰
炉縁 東大寺古材 道善箱
水指 備前
茶器 不白好烏帽子
当代箱 喜三郎造
茶碗 高麗
替 大樋 十代長左衛門造
茶杓 当代家元作 共筒箱
銘 瑞霞
建水 曲 内黒
蓋置 竹 当代在判
御茶 寿泉の白 ほ里つ詰
菓子 若緑 鶴屋八幡製
器 一閑雪輪透縁高 雅峯造
以上